■ 【オルタのこだま】

相次ぐ月刊誌の休刊と「朝日ジャーナル」の復刊    今井 正敏

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 私が毎月、熱心に目を通し、情報収集源の一つにしているメールマガジン「オ
ルタ」は創刊5年を越え、66号に成長した。これは加藤編集長を始めとする関係
者のご努力の結果であるが、このように伸びるメデイアがある反面、最近は大手
出版社の看板雑誌が相次いで休刊している。
 
  5月9日付け朝日新聞は「休刊続々もがく書き手・ 月刊誌失い「ノンフィクシ
ョンの危機」」という見出しでそれぞれカラーの違う『論座』『月刊現代』『諸
君!』などの休刊を伝えている。これらの雑誌は版元が朝日新聞、講談社、文芸
春秋社など大手なだけに休刊の影響は大きい。さらに、この記事では「『月刊現
代』休刊とジャーナリズムの未来を考える」シンポジュウムが開かれ定員200名
の会場に人が溢れる盛況であったという。
  また、この会のパネリストで作家の佐野真一氏が「「PLAYBOY」を含め
、いろんな芸風の月刊誌が4つも無くなったが、まるで全方位型の暴風雨に巻き
込まれたような恐怖を感じる。不況より出版界、編集者の劣化が原因では」と話
していた。
 
  さらに、4月の朝日新聞「論壇時評」で社会経済学者の松原隆一郎氏が、休刊
問題を取り上げ「保守もリベラルもノンフィクションも軟派もジヤンルの別なく
月刊総合誌が消えてゆく。広告収入の激減が理由だが、講談社は08年11月決算で
過去最高76億円の赤字で、これまでの最高赤字の百倍というからただ事ではない
。他社は推して知るべしだ。(中略)『現代』は最盛期には30万部以上売り上げ
ていたが最近は5万部前後で赤字続きだったという。」と述べて月刊誌凋落の原
因を広告の減収だけでなく、「ネット」という「黒船」の問題もふくめ多面的に
指摘されていた。

 このように月刊誌の休刊が相次ぐなか、「この国への強い危機感」と「知的虚
栄心」「知の復権」をモットーに「朝日ジャーナル」が「怒りの復活」をした。
「復刊」でなく「週刊朝日」の緊急増刊という形をとり、「怒りの復活」と名づ
けた「復活」である。朝日新聞広告を見ると売れ行き好調のようで「復活」1カ
月で4刷とあった。これが一時的なものか、好調が続くのか分らないが、ジャー
ナル全盛時代に毎月宅配されるのが待ち遠しかった私の老壮年時代が懐かしい。
  世界経済は「百年に一度」の危機と言われているが、出版界も大きな変動に直
面しているので、わが「オルタ」も文化面重視という立場から折を見て出版界の
動きを取り上げて貰いたいと思う。

              (筆者は元日本青年団協議会本部役員)

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