【コラム】

有閑随感録(83)

在留資格変更許可等に係る手数料改定
矢口 英佑

 日本人にはまったく関わりがないため、知らない日本人も多いにちがいないが、ちょうど1年前の2025年4月1日から「出入国管理及び難民認定法施行令の一部を改正する政令」が施行され、在留資格変更許可などに必要な手数料の額が改定されていた。ただし、手数料の改定どころか、外国人が日本で生活するためには、その在留資格に応じて申請のたびに一定の料金を支払わなければならないことさえ知らない日本人も少なくないのだが。

 1年前の手数料改定では、たとえば「在留資格変更許可」(一例として留学生ビザ→就職ビザ)は4,000円から6,000円(オンライン手続きでは5,500円)、「在留期間更新許可」(一例として1年から3年に)も4,000円から6,000円(オンライン手続きでは5,500円)、「永住許可」は8,000円から10,000円、再入国許可(1回限り)3,000円から4,000円(オンライン手続きでは3,500円)、再入国許可(数次)6,000円から7,000円(オンライン手続きでは6,500円)へと値上げされ、決して小幅とはいえない金額になっていた。

 ところが、それから1年経たずに高市政権は2026年3月10日に再度、入管法改定案を閣議決定し、国会に提出した。この法案では、在留資格・期間の更新・変更手続き等については、現行は上述したように上限は1万円としていたが、それを上限10万円に変更、永住許可の手続きについては現行の上限1万円から30万円に変更し、具体的な金額は政令で定めるとして、手数料額は政令に委任されている。そして、改正された法律及び政令は2027年3月31日までに施行とされている。
 2027年3月31日までに施行される予定の新たな法案に示されている在留資格手続きの手数料が、現行のそれと比べるととんでもないほどの大幅な引き上げであることがわかるだろう。法律上の手数料上限は現在の10倍、永住手続きでは30倍と跳ね上がることになる。政府は「あくまでも上限であり、そこまで引き上げるとは決まっていない。あとは政令で決める」としているが、この政令を決めるのも人間であり、高市政権の意向を強く反映させる金額になることは目に見えている。

 手数料というものの値上げに際し、これが日本人向けであったなら、これほどの激しい引き上げを実行することなどできないにちがいない。凄まじい批判の声が国民から上がるからであり、その値上げ幅の納得のいく説明もできないだろう。
 ここには、あくまでも対象者が日本に留まりたい外国人ということから、〝日本で生活させてやる〟〝言われた通りに生活せよ〟という上位者意識が潜んでいるように見えて仕方ない。政府関係者は否定するだろうが。

 私がこのように言うのは、2026年1月23日に「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」での「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」には、おおよそ次のように記されているからだ。
 「一部の外国人による法やルールを逸脱する行為には公正・厳正な対処。国民が感じている不安や不公平感の払拭。外国人の事実・実態を把握した制度の適正化。正確な情報公開、関係機関間の情報共有・相互連携により、法やルールを守り国民と外国人の双方が安全・安心に生活し、共に繁栄する社会の実現」
 といった内容である。この対応策からは、両手を広げて外国人を迎え入れようとしていないのはあまりにも歴然としているだろう。

 これに連動しているのが手数料の常識外とも言える大幅値上げの理由である。これまでの手数料では行政サービスを維持できないため、サービスを受ける側がその維持管理コストを負担すべきという「受益者負担」の論理がそこにはある。確かに近年、在留外国人は急増していて、担当人員を増やすだけでなく、審査の迅速化のためのシステム導入や多言語による相談窓口の拡充、地域社会との共生を推進など、これまで以上に財源が必要になっている。また、不法滞在者の摘発と強制送還にかかる費用の確保も必要だろう。
 だから「受益者負担」となるのだろうが、現在のように外国人就労者が増加してきているのは、もとをたどれば日本の生産年齢人口減ではないのか。そうだとすれば〝受益者〟は外国人就労者だけでなく日本という国も、そして日本人も当然含まれるはずである。この「受益者負担」という言葉は、今回の場合だけでなく、多くの場でいかにも都合よく使われてきていると常々感じてきている者としては、どうしても素直に受け入れられない。

 また、今回の手続き手数料の大幅値上げは「外国人」だけが困るわけではない。外国人を雇用する企業にも間違いなく影響を及ぼす。特に更新頻度が必然的に多くなる特定技能外国人就労者を受け入れている多くの職種では深刻度が増すはずである。
 日本は国籍取得や帰化に対する要件をこれまで以上に厳格化する方向に舵を切り、それだけに、たとえ日本に長く居住していても日本国籍を持たない「外国人」は在留申請を繰り返さざるを得ない。在留資格を得る費用も2027年からは大幅に値上がりすれば、更新費用を捻出できずに日本での生活を断念せざるを得ない外国人も現れるだろう。

 要するに今回の在留資格変更許可等に係る手数料改定は、単に申請費用高騰の話だけではなく、高市政権の外国人政策全般の厳格化であり、取り締まり強化の方針に沿っていることを忘れてはならないだろう。

 (元大学教員)

(2026.4.20)
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