【コラム】ドクター・いろひらのコラム(24)

建国250年に「米国第二権利章典」を回復しよう!

色平 哲郎

 26年6月18日、アメリカとイランは、戦闘終結に向けた覚書に署名し、60日以内の最終合意を目指して協議に入った。世界はホッと胸をなでおろしたが、アメリカが支援を続けるイスラエルはレバノンの親イラン武装組織ヒズボラへの攻撃を止めず、イラン側は協議会場から退出、協議は不透明化している。
 
 トランプ大統領の出現で、国際法による「法の支配」を無視し、軍事力と経済力に頼った「力の支配」が世界の趨勢となった。ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルのガザ虐殺も終わりが見えない。民主政治は後退し、独裁と強権が大国を覆っている。力の支配とは、ひと言でいえは「命を鴻毛のごとく軽く扱う」権力行使である。
 
 一方で、トランプ氏お膝元のニューヨーク市では、2026年1月に民主的社会主義者(DSA所属)のゾーラン・マムダニ氏34歳が市長に就任。マムダニ氏は、賃貸住宅の家賃上限の凍結や保護、公共バスや保育の無料化、移民保護などとともに、医療ユニオンや公衆衛生の専門家と連携、「すべてのニューヨーク市民が自宅の近くで質の高い医療を受けられるようにする」ための公立病院改革に取り組んでいる。
 
 医療情報サイト「The Cardiology Advisor」の医療ジャーナリスト、ニッキー・キーン氏の記事によると、マムダニ市長は年間100万人以上が受診するニューヨーク市ヘルス&ホスピタルズ(H+H)への資金援助増額や、地域の医療機関の閉鎖阻止に動いている。
 
 また、妊産婦の死亡率改善、とくにマイノリティ地域での改善を目指し、看護師を各家庭に派遣するプログラムに2000万ドルの予算を投じている。さらに6~25歳の若年層を対象としたメンタルヘルスケアを含んだ医療サービスの拡充も積極的に推し進めるという。
 
 マムダニ氏の非凡さは、水と油と思われるトランプ大統領とも表向きは敵対せず、多様な人が暮らす「地域」に根ざした改革を実行している点にある。これは、彼が地域活動家として低所得者や移民の生活を守る活動を蓄積してきたことに依拠している。極めてプラグマティックに物事を処する力を持っている。そこが、米民主党エリート層の抽象的な言説を振り回す「お説教政治」との違いだ。
 
 マムダニ氏の演説には、「情」があり、「笑い」があり、主義主張を越えた「説得力」がある。ないのは「上から目線」だ。マムダニ氏の実践は、行きづまっている日本のリベラル勢も見倣うべきではないだろうか。
 
 「力の支配」を権力闘争で変えようとしても、同じ土俵から脱することは難しい。力の支配に対抗しうるのは、草の根の民意だ。諸物価が高騰し、社会保障は切り捨てられ、大切な税金が軍事力増強に回される。
 
 こうした状況に耐えかねている人びとの心をつかみ、民主政治を取り戻すこと。そのためには抽象論ではなく、具体策を組みあわせて地域を変える「情と理」が求められる。
 
 DSAに集うマムダニ氏、サンダース上院議員、オカシオ・コルテス下院議員らは雇用・医療・住居・教育など生存権的権利を保障すべきと主張している。
 
 色平 哲郎(いろひら てつろう)
 JA長野厚生連・佐久総合病院地域医療部地域ケア科医長
 大阪保険医雑誌2026年7月号掲載

(2026.7.20)
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