■北の便り (5)             南 忠男

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寒くて暗い冬>>

 今年も11月がやって来た。紅葉の季節も過ぎ、北海道、とりわけ旭川にとっ
て最もくらしづらい嫌な季節だ。今年の冬が特段変わった様子もないのに、「寒く
なりましたね」がお互いの挨拶言葉となる。毎年同じことが繰り返され、毎年同
じことを経験していてもやっぱり冬は嫌だ。寒さが身に堪えるし、降り積もる雪
の始末は想像するだけでうんざりする。
 7月初旬旭川で開催された、日本ウオーキング協会認定の大会「川のまち旭川
大雪ツデーウオーク」に参加された都府県の人たちはみな異口同音に「旭川って
良いところですね」と感嘆していたが、これはたまたま良い季節にこられただけ
の話である。旭川の良い季節は6~7月で、せいぜい8月の半ばまでである。お
盆も過ぎると秋風が吹きはじめ、海水浴は終わりになる。10月に入れば肌寒くな
り衣替えがはじまるし、ストーブを炊きはじめる。「花の命は短くて苦しきことの
み多かりける」。今年は特にガソリン・灯油の高騰で大変な冬になりそうだ。煙突
が消えた今(家庭用石油ストーブがFF式になって一般家庭から煙突が消えた)、
石炭や薪に転換することも不可能である。
 11月は季節の変わり目で、最も嫌な時期であるが、11月は北海道経済にとっ
ても衝撃的な事件が相次いで発生しており、暗い話題の多い月でもある。4年前
の11月太平洋炭鉱の閉山が発表された。九州の池島炭鉱につづいて、最後の炭
鉱がなくなり、日本の戦後復興を築いた石炭産業は全て国内から姿を消した。
 札幌に本店を置く、北海道唯一の都市銀行、「たくぎん」が倒産したのも、8年
前の1997年の11月17日のことである。
 今年の11月末にはダイエー苫小牧店が閉店する。同じく、苫小牧では、丸井
今井苫小牧店が10月25日に閉店している。苫小牧にとっては、駒大苫小牧高校
野球部が甲子園で2年連続して優勝したのに加え、今秋の岡山国体でも優勝した
慶びも束の間の話である。
 高校球児は永い冬と言うハンデイを克服して全国制覇を三回も為し遂げたが、
北海道経済は依然としてドロ沼である。「丸井今井」は道民から「マルイさん」と
呼ばれ親しまれてきた老舗のデパートである。札幌本店の他、小樽、函館、旭川、
釧路、苫小牧に支店を構えてきたが、経営が悪化して、事実上伊勢丹の支配下に
おかれて再建中であった矢先、小樽、苫小牧の両支店がこのたび閉鎖されること
になったのである(釧路店は明年の7月に閉店される予定)。私の住んでる旭川
も、JR駅前通りは、全国に先駆けて歩行者天国を建設し、メンストリートとし
て賑やっていたが、いまは、郊外への大型店の進出により火が消えたような状態
になっている。比較的大きな家電店が2店あったが、次々と道外から上陸してき
た超大型家電店によって淘汰されてしまった。
 北海道の自治体の財政も深刻である。助役・収入役を廃止したり、議員・職員
の定数を削除したりして自立を模索している市町村も多いが、自立の道も閉ざさ
れて合併の道を選択せざるを得ないところに追い込まれている。
 北海道庁が深刻な財政難から、赤字再建団体への転落寸前の状態にあり、職員給与の10パーセントカットとリストラが始まった。不況による収入減や、国の
不況対策で押し付けられた公共事業の地元負担のツケが廻って来てどうしようも
ない状況に追い込まれてしまったのだ。
 「冬来たりなば、春遠からず」と言うが、北海道の冬は長く、春は遠い。11月
から5月まで続く長丁場である。しかも、北海道の冬は寒くて暗い。北海道の医
療費は福岡県に次いで全国第2位である。雪が深く、寒さの厳しい北海道では冬
場の通院もままならず、入院となってしまうのである。春を迎えれば、いやおう
なしに医療費の大幅値上げがまっている。

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