【「労働映画」のリアル】
労働映画のスターたち(92)宮崎 美子
《今もピカピカに光って… 明るい笑顔が「品質保証」》
♪いまのキミはピカピカに光って あふれかえるほど素敵 (作詞/糸井重里)
1980年春、ミノルタ一眼レフカメラ「X-7」のCMで、一躍国民的アイドルとなった宮崎美子さん。若い世代には、明るい雰囲気のお母さん or おばあちゃん役の人、と認識されているのかも知れないが、当時のお茶の間にとってはセンセーショナルなデビューだった。ピカピカに光った「80年代」は、ここから始まったのかも……。
サイパンの海辺。木陰に立つ女性が、周囲を気にしながらTシャツとGパンを脱いで水着姿になる。ここでカメラの存在に気付いて、はにかんだ笑顔で見つめる。
このCMのコピーライターだった糸井重里氏は、映像を見て「言いにくいですけど、ダッサイなあって思ってました」。70年代の美しくスタイリッシュな広告とは全く違う素人っぽさ、近所のお姉さんのような素朴な感じが、その後に展開される「80年代」の方向性を示唆していたのかも知れない。
CM初出演の宮崎さんは当時21歳。熊本大学法学部在学中で、篠山紀信が撮影する「週刊朝日」の公募表紙モデルに選ばれたことがデビューのきっかけとなった。「花の中三トリオ」(森昌子・桜田淳子・山口百恵)と同学年だが、“少女歌手”とは全くの別世界から現れた彼女のインパクトは、『ミスDJリクエストパレード』(1981~85、文化放送)、『オールナイトフジ』(1983~91)などの「女子大生ブーム」に繋がっていく(このあたりのお話が、もうすぐ半世紀前になるんですね…思わず溜息が)。
宮崎さんにとってCM出演の動機は、「春休みに海外に行けること」だった。芸能界に入る気はなかったが、熱心な勧誘に押し切られる形で、TBSのポーラテレビ小説『元気です!』(1980)でいきなり主演。明治期のヒロインを務めた。
多忙な芸能活動と並行して、東京-熊本間を毎週飛行機で往復し、きちんと大学を卒業。数多くの映画・テレビドラマで「勝気なお姉さん」、「しっかり者のお母さん」、「優しいおばあちゃん」役を歴任。さらには『クイズダービー』(TBS)の解答者、ナレーター、司会者などなど、ジャンルを超えた幅広い仕事を現在も続けている。
40年以上にわたる作品歴を眺めると、宮崎さんが出演していることで「しっかりした」作品というイメージが湧くのが面白い。ストーリーに大きく関わる役ではなくても、家族や集団の中に宮崎さんの笑顔が含まれていると、ここでは彼女が「調整役」を務めているのだなあ、という雰囲気が醸し出される。
山本周五郎・原作、黒澤明・脚本の時代劇『雨あがる』(2000、監督・小泉堯史)では、武芸の達人だが不器用な浪人(寺尾聰)の妻の役。夫はある藩の剣術指南番に内定するが、人助けのために行った“賭け試合”が原因でご破算に。妻は終盤まで黙って夫を見守っているが、ここに至って、城からの使者に穏やかに反論する。
「大切なことは、主人が何をしたかではなく、何のためにしたかということではございませんか」(……ここ、すごく良い場面なのでぜひご覧ください)
ヤン・ヨンヒ監督が自分の家族をモデルに描いた劇映画『かぞくのくに』(2012)では、「帰国事業」で北朝鮮に渡った息子(井浦新)の里帰りを迎える母の役。彼は病気の治療のため日本滞在を認められたのだが、本国から帰還命令が下り、失意のまま旅立っていく。母の台詞は殆どないが、再会の時も、別れの時も、気丈に笑顔を保とうとする姿が強く印象に残る。この「笑顔」を宮崎美子さんが演じたことは、他の俳優さんがキャスティングされた場合とは明らかに違ったのではないかと思う。
この後、NHK朝ドラ『ごちそうさん』(2013)や「日本マクドナルド 50周年CM」(2021)などで、モダンでチャーミングなおばあちゃんを好演。終活を巡るファンタジードラマ『介護スナック ベルサイユ』(2025・東海テレビ)では、様々な人生を見守るストーリーテラー役を務めている。
参考文献:「みんなCM音楽を歌っていた 大森昭男ともうひとつのJ-POP」 田家秀樹 徳間書店 2007年
(しみず ひろゆき、映像ディレクター・映画祭コーディネーター)
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●労働映画短信
◎働く文化ネット 「労働映画鑑賞会」
働く文化ネットでは、毎月「労働映画鑑賞会」を開催しています。お気軽にご参加ください(参加費無料・事前申込不要)。
第117回 労働映画祭2026 「私たちは ロボットではない!」
日時:2026年7月11日(土)13時30分~16時30分(13:00開場)
13:30 主催者代表挨拶
13:35 映画 『UNION』上映(100分)
15:15 休憩
15:30 トークショー
ゲスト:山崎精一氏(レイバーネット日本・国際部 日本ILO協議会企画運営員)
安河内賢弘氏(連合副会長・JAM会長)
司会:鈴木不二一 (働く文化ネット理事)
16:30 閉会
上映予定作品:『UNION ユニオン』
2024年/100分/アメリカ/監督:スティーブン・メイン、ブレット・ストーリー
内容:2022年4月1日、アメリカ・ニューヨーク州スタテン島のAmazon配送センター〈JFK8〉で州労働組合認証投票が行われ、組合が勝利した。全米が注目したAmazon組織化の第一歩である。巨大企業に立ち向かう労働者たちの果敢な闘いの記録。
予告編(英語) https://www.youtube.com/watch?v=SQqKJl78l40
作品サイト(英語) https://www.unionthefilm.com/
会場:連合会館 2階 大会議室(地下鉄千代田線 新御茶ノ水駅 B3出口)
働く文化ネット公式ブログ http://hatarakubunka-net.hateblo.jp/
◎【上映情報】労働映画列島! 6月~7月
※《労働映画列島》で検索! https://shimizu4310.hateblo.jp/
◇新作ロードショー
大統領のケーキ 《7月10日(金)から 東京 新宿ピカデリーほかで公開》 1990年代、フセイン 大統領の誕生日を祝うケーキを用意する係に選ばれた9歳の少女。お金も時間もない状況の 中、知恵と想像力を振り絞って難題に取り組む。(2025年 イラクほか 監督/ハサン・ハーディ)
ユースフル・ゴースト 《7月10日(金)から 東京 新宿武蔵野館ほかで公開》 タイの古典的な 怪談に着想を得た物語。粉塵公害が深刻化するバンコクで、最愛の妻を亡くした夫の許に、妻 の霊が掃除機に憑依して舞い戻る。(2025年 タイ 監督/ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク)
新凱旋門物語 《7月17日(金)から 東京 ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開》 フランス革命200周年を祝う新モニュメントの設計者に選ばれた建築家。完璧を追い求める彼の 前に、様々な困難が押し寄せ…。(2025年 フランスほか 監督/ステファン・ドゥムースティエ)
原爆資料館 語り継ぐものたち 《7月18日(土)から 東京 ポレポレ東中野ほかで公開》 1955年開館の平和博物館を巡るドキュメンタリー。2万点を超える遺品や資料を守り続けた歴代 館長の執念と努力を辿っていく。(2025年 日本 監督/立川直樹・斉藤俊幸)
◇名画座・特集上映
▼北海道・東北
【札幌 シアターキノ】 7/11~18 「北海道の映画作家たち」…馬橇の花嫁/リトルサーカス/茜色 クラリネット/へのじぐち/壁男/アンモナイトのささやきを聞いた/Wakka/冬へのパッサカリア/他
【宮古 DORAホール】 7月閉館・8月から会場移転 「DORA THEATER」…6/19~22・26~29 ラプソディ・ラプソディ/ナースコール
▼関東・甲信越
【舞浜 シネマイクスピアリ】 「キネマイクスピアリ 舞浜で名画を~アルフレッド・ヒッチコック監督特集」…7/10~16 めまい 8/21~27 サイコ
【飯田橋 東京日仏学院エスパス・イマージュ】 6/7~7/19 「第7回映画批評月間 フランス映画の現在」…エウレカ/アヴァンチュール/インディア・ソング/カプリス/ジャンヌ・ディエルマン/他
【東京 ラピュタ阿佐ヶ谷】 6/14~8/18 「戦争映画をみる、感じる、考える。」…人間魚雷 回天/南の島に雪が降る/硫黄島/眞空地帯/春婦傳/人間の條件 六部作/あゝひめゆりの塔/他
【東京 新宿 K's cinema】 6/20~7/17 「英国イーリング・コメディの黄金時代」…ウイスキー・ガロア/カインド・ハート/白衣の男/ラベンダー・ヒル・モブ
【東京 御茶ノ水 アテネ・フランセ文化センター】 6/26 「福田克彦 共同体から個人のまなざしへ」…逝けなかった魂/草とり草紙
【鎌倉市川喜多映画記念館】 6/30~7/26 「アメリカン・シネマの道しるべ」…ミステリー・トレイン/タクシードライバー/天国の日々/シェフ 三ツ星フードトラック始めました/フロリダ・プロジェクト/他
▼東海・北陸
【高岡 御旅屋座】 6/19~7/23 蒸発/レジェンド&バタフライ/RASIN 羅針/カルテットという名の青春
【ナゴヤキネマ・ノイ】 6/27~7/10 「没後40年 アンドレイ・タルコフスキー 超域の映像2026」…惑星ソラリス/鏡/ストーカー/ローラーとバイオリン/僕の村は戦場だった/アンドレイ・ルブリョフ
▼関西
【吹田 国立民族学博物館】 7/11 「みんぱく映画会」…ダホメ (2024年 監督/マティ・ディオップ)
【豊岡劇場】 7/10~12/16 「“シネマドリフター” リム・カーワイ─新世界の夜明け」…アフター・オール・ディーズ・イヤーズ/マジック&ロス/恋するミナミ/いつか、どこかで/あなたの微笑み/他
▼中国・四国
【総社 円結】 「シネまるむすび」…6/19~29 アイヌプリ 7/3~13 水になった村 7/17~27 FUJIKO 7/31~8/10 アメリと雨の物語 《日本語版》 8/21~31 脛擦りの森
【黒潮町 大方あかつき館】 「あかつきシアター」…6/26~7/8 霧のごとく/フジコ・ヘミング 永遠の音色 6/27・28 超かぐや姫! 7/3~8 木挽町のあだ討ち/ギデンズ・コーの功夫
▼九州・沖縄
【福岡市総合図書館 映像ホール シネラ】 7/11~25 「Asian Film Joint 2026:私たちは覚えている」…タゴール・ソングス/ナラティブ/何も知らない夜/ピポリピナス共和国/生きていく日々/他
【那覇 桜坂劇場】 7/18~31・8/15~28 「神代辰巳監督特集」…悶絶!! どんでん返し/濡れた欲情 ひらけ!チューリップ
▼海外
【ニューヨーク Japan Society】 7/8~18 「JAPAN CUTS 2026」…TOKYOタクシー/COCOON/ホウセンカ/佐藤さんと佐藤さん/遠い山なみの光/ナイトフラワー/炎上(2026)/箱の中の羊/他
◎日本の労働映画百選
働く文化ネット労働映画百選選考委員会は、2014年10月以来、1年半をかけて、映画は日本の仕事と暮らし、働く人たちの悩みと希望、働くことの意義と喜びをどのように描いてきたのかについて検討を重ねてきました。その成果をふまえて、このたび働くことの今とこれからについて考えるために、一世紀余の映画史の中から百本の作品を選びました。
『日本の労働映画百選』電子書籍版(2021.04更新)
https://drive.google.com/file/d/1WUUYiMwhdncuwcskohSdrRnMxvIujMrm/view
(2026.6.20)
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