加藤宣幸さんを偲んで、思い出の数々

山田 高

 加藤宣幸さんとお付き合いさせていただくようになったのは、江田三郎さん秘書の矢野凱也さんの紹介でした。新時代社と生活クラブ生協が一緒になって作った協同図書サービスの社長に矢野さんが就任されたころで、何度か神保町の会社を訪ねた時、加藤さんを紹介されました。
 その後、いろんな会合で顔を合わせることがありました。

<思い出その 1.>
 加藤さんと矢野さんの米寿をお祝いする会を開催した時、加藤さん側の実行委員代表は初岡昌一郎さん、矢野さん側の実行委員代表は私(山田)が担当という形で準備を進めました。このお祝いを記念して、記念の冊子を作成しようということになり、加藤さん、矢野さん、初岡さん、私、山崎正樹さんが箱根の旅館に二泊して、加藤さん矢野さんにインタビューを行いました。お二人とも記憶は確かで、80年近い交友関係をお話しいただきました。加藤さんはバッグに過去の古い資料をたくさん持ち込まれて、それらを確かめながらのインタビューとなりました。正確な記述を残しておこうとされる加藤さんの実証主義的な姿勢にたいへん感動した覚えがあります。(『莫逆の友とともに』加藤宣幸・矢野凱也/米寿記念誌)

<思い出その 2.>
 「矢野君が今度東京に出てくるというから、神田の寿司屋で一緒に昼飯でも食べよう」と言って、加藤さん、矢野さん、仲井さん、私の4人で食事をすることが何度かありました。

<思い出その 3.>
 矢野さんが亡くなられた時、葬儀は家族だけで行われたという知らせを受けて、加藤さん、仲井さんたちと相談して、矢野さんと親しかった人、お世話になった人たちで2017年4月、鎌倉霊園にお墓参りに行こうという企画を立てて、加藤宣幸さんに実行委員長を引き受けていただきました。また、お墓参りには行けなかった方もいるので同年10月には「矢野凱也さんお別れの会」を開催しましたが、この時も加藤宣幸さんに実行委員長を引き受けていただきました。

<思い出その 4.>
 毎年5月、江田三郎さんの命日の頃、「江田三郎さんを偲ぶ会」を開催しています。この集まりをいつしか「江田ファミリーの会」と呼ぶようになりました。加藤宣幸さんは矢野さんとともに江田ファミリーの会のドンのような存在でした。加藤さんからは「江田三郎さんを偲ぶだけの会から脱皮して、若い研究者なども参加するような会にした方がいいんじゃないか」とアドバイスをいただいていました。加藤さんから課せられた私の目下の宿題です。

<思い出その 5.>
 加藤宣幸さんから「オルタ」を手伝ってくれと言われて、編集委員を仰せつかっていましたがあまり役に立てなくて申し訳なく思っています。「オルタ」のオープンセミナーを開催した時は受付を担当していました。それでも2回ばかり「オルタ」に原稿を書かせていただきました。一度は加藤宣幸さんから、「松下圭一さんへの追悼文を書かないか」とお誘い受けて書かせていただきました(137号)。また、書評として『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を書かせていただきました(139号)。

<思い出その 6.>
 江田ブレーンの一人であった山本満さんの死亡記事を新聞で見た時、加藤宣幸さんに連絡して一緒に葬儀に行きました。江田ブレーンの松下圭一さんのお別れの会にも、加藤宣幸さん、竹中一雄さん、浜谷惇さんと一緒に行きました。

<思い出その 7.>
 加藤宣幸さんから「君が尊敬している竹中(一雄)さんも参加している、『仏教に親しむ会』というのがあるんだが、君も参加してみないか」と誘われて、月一回の例会に参加させてもらうようになりました。例会の後の加藤宣幸さん、竹中一雄さん、浜谷惇さんとの時事問題の解説を聞くのがとても楽しいひと時でした。お酒も少し入るのですが、「君は飲まない方がいいんじゃないか、少しにしておいたら」と食道がんの手術をした私のことを気遣ってくれる心優しいところがありました。堅物で近づきがたい感じのしていた加藤宣幸さんですが、はるかに年下(二回りの年齢差)の私にも気遣いを見せてくれる優しい人でした。そう言えば、私が食道がんの手術をした病院に前後して加藤さんも入院されていたことを後で知ってびっくりしたことがありました。

 思い出話は尽きないのですが、江田三郎さんの側にいた人が一人、二人と亡くなられ、そうした人たちに恩義を受けながら過ごしてきた私にとっては寂しい限りです。
 江田三郎さんが残し、世に問いかけてきたものを、残された世代がどのように次世代に伝えていくか、加藤さんから投げかけられた宿題も含めて考えていきたいと思います。加藤さんのご冥福をお祈りします。

 (江田ファミリーの会幹事)

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