■ 俳句                     富田 昌宏

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◇ 遠景に女子刑務所や麦の秋
(栃木女子刑務所)

◇ 遠き日の父の匂いや麦の秋

◇ 父の忌のまた近づきて田水沸く

◇ 栃咲くや蜜蜂を飼ふ新庁舎
          (栃木県庁)
◇ 栃咲くや江戸創業の和菓子店

◇ 憂きことを一つ捨てけり更衣

◇ 手抜きすることも生き方木下闇

◇ 夏寒し後期高齢者の医療

◇ ガンジーに似たる貌して黒揚羽

◇ 闇に描く"こひ"の二文字や初蛍

■ 亡妻(つま)を詠う
                富田 昌宏

◇ 「もう君は居ないのか」立夏の朝の膳

◇ 散り急ぐ緋牡丹しずく雰しけり

◇ お茶好きの妻の遺影に新茶注ぐ

◇ 亡き妻と語り明かさむ蛍の夜

◇ 吹く風に亡妻(つま)の寝息や竹落葉

◇ 籾種を蒔かで妻逝く虚にかな

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