■俳句 富田 昌宏

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   強東風や築百年の鬼瓦
   東風吹くや村に消えたる童唄
   妙義山厳父の相や葱坊主
   不用意に蛇穴を出て阿修羅の世
   市街化に取り残されし春田打つ
   春田中紺の野良着の妻帰る
   亀鳴くや忘却といふ静けさに
   春動く志功観世の乳房より
   啓蟄や暗証番号忘れたる
   大津絵の鯰のひげに風ひかる

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