【コラム】神社の源流を訪ねる(94)
伊勢の神々④「古代朝鮮渡来」の舞楽
伊勢神宮を訪ねていて、偶然「古代朝鮮渡来の舞楽」が公開される日に当たったのは僥倖というべきだろう。朝鮮式舞楽は平安朝より以前から引き継がれている。ただし伝承者は極めて少なく、そう頻繁にみられるものではないらしい。
金達寿氏の「日本の中の朝鮮文化」(第4巻)で、古代史研究の先生方が、伊勢神宮で「古代朝鮮渡来の舞楽」を見て、興奮気味に語りあっている場面はなかなか興味深かった。
この公開演舞は東京でも見る機会があったが、現地で見るのとは一風感じが違うものである。歴史の重みを知った感じだ。見たのは「和舞」(やまとまい)「人長舞」(にんじょうまい)「胡蝶」(こちょう)「納曾利」(なそり)などである。
舞姫による「倭舞(やまとまい)」と、男舞の「大和舞(やまとまい)」は、奏楽は同じでも、神宮風にアレンジして優雅な舞になっているという。
舞女が緋色(ひいろ)の長袴に、白羽二重の千早(ちはや、神事の衣裳)を付け、紅梅を飾った天冠(てんかん)を頂き、右手に五色の絹をつけた榊の枝を持ち、楽師の歌にあわせて、4人または6、8人で舞う。「人長舞」の人長とは神楽人の長のことで、その人長が一人で榊の枝に鏡を模した白い輪を取り付けた榊を、右手に持って舞う。
舞楽は、左方の唐楽(とうがく=中国より伝来)と、右方の高麗楽(こまがく=朝鮮半島より伝来)に分かれている。装束がまた鮮やかだ。蘭陵王は、朱色の竜の唐織り(立体感のある織り方)の裲襠(りょうとう・貫頭衣型)装束といういで立ちだ。
この場合、外来音楽というと、中国渡来の唐楽と、朝鮮半島から伝わった高麗楽のことで、伝来先からの楽器も使われる。唐楽の舞では左舞(さまい)、赤色を基調とする装束、高麗楽の舞は右舞(うまい)と呼ばれ、緑色の衣装で舞う。左舞の特徴は管楽器の「笙」が使われる。「笙」は切れ目なく奏でる和音が華やかで、包み込むような雰囲気を作る特徴がある。
一方「右方」は「笙」に代わって、「高麗笛」や「三ノ鼓」(さんのつづみ)と呼ばれる打楽器が使われる。高麗笛と篳篥(ひちりき)が奏でる旋律が際立って聞こえる。また、三ノ鼓は「鞨鼓」(かっこ、胴筒の両面太鼓)と違い長短のある一定の間を持つ打ち方で簡素なリズムである。
舞楽は朝鮮半島から伝わった「高麗楽(こまがく)」中国大陸から伝わった「唐楽(からがく)」が源流で、これに当時から日本にあった「倭唄(しずうた)」「久米歌(くめうた)」「神楽歌(かぐらうた)などの歌と舞を合わせて、10世紀頃の平安時代に舞の形となったという。
(2026.9.20)
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