◇投書  今井 正敏

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 「7月30日付け朝日新聞の「私の視点」に「首相の靖国参拝」というテーマ

で作家渡辺淳一氏、同志社大学教授村田晃嗣氏、日本国際問題研究所招聘研究員

ロバート・ドウジヤリク氏の意見が載っていたが、私はロバート氏の論に注目し

た。同氏は「実は、中国は小泉首相に靖国参拝を続けて欲しいと考えているかも

知れない。

 

 首相の靖国参拝はアジアで中国の立場を強め、日本の立場を弱めている。

それを胡錦濤主席はひそかに歓迎しているのではないか」と喝破し、さらになぜ

靖国問題は中国の国益になるのかとして、以下の4点を上げている。

 第一は韓国が日本は敵対国だと思わせるようになること、

 第二は小泉首相の靖国参拝と発言はアジアでの日本の立場を傷つけたこと。

その例としてシンガポール首相の発言をあげている。

 第三は歴史問題が香港を中国寄りにさせ、日本は中国に影響を与えるルートを

失ったこと

 第四は中国は米国においても、日本が否定的に映るようにプロパガンダを通じて

靖国問題を利用できたことを例示している。

 

 これらを総括して同氏は「日本の政策目標は東京裁判の公平性や教科書の内容

についての議論に勝つことではない。日本は歴史問題を戦略的に扱うことで中国

に外交的敗北を喫するのを避け、逆に自国の立場を強化すべきだ」と提言し、最

後にドイツはナチに殺された遺骨が無数に埋まるポーランドやガス室で死んだ親

類が数多くいるイスラエルでも高い評価を受ける国になったと結んでいる。

 この見解は北京での6者協議、ラオスでの外相会談、そして日本の国連常任理事

国入り問題などで日本の立ち場は弱く、中・韓の存在感がクローズアップしてい

ることによって確実に立証されているように思われる。

 

 それにしても、ポスト小泉に名の上っている安部晋三氏は「次期首相も靖国に

参拝すべきだ」と繰り返し、石原都知事にいたっては、死語になった「シナ」と

言う言葉を使って

 「シナの言ってることに屈するな」と当り散らし、桜井よし子氏は「無法国家中

国は他国のことを、あれこれ言う資格は無い」などと語ったりしているがロバー

ト氏の論理でいえば、これらの人々は胡錦濤主席を手助けしていることになる。

抗日戦争のとき、毛沢東主席は「日本軍国主義者の中国侵略は、中国革命を手助

けしてくれている」と語ったというがこれと同義語になる。中国の政治家のした

たかさ、中国外交の奥の深さを感じるが、このさき靖国問題はどのように展開す

るのか。

                        (筆者は元日青協役員)