【アフリカ大湖地域の雑草たち】(59)

メイド・イン・ジャパンを知らない未来

大賀 敏子

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今後30年でサブサハラ・アフリカでは人口が倍増する国も現れ、その経済的存在感は急速に高まっている。ケニア製電動バイクの大陸縦断、中国BYDとの協業による電動バス、再生可能エネルギー9割という電力事情——変貌するアフリカの現場から、日本のプレゼンスの現在地を静かに問い直す。
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I 伸びる大陸

人口倍増

 世界総人口は、今後30年間(2024年から2054年)で、81億人から98億人に増えると見込まれるが、とりわけサブサハラ・アフリカで大きな伸びが予想され、なかには倍増する国もある。
 倍増が見込まれるのは次の9ヶ国(と地域)だ―アンゴラ、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ民主共和国、マリ、マヨット、ニジェール、ソマリア、タンザニア連合共和国。また、コンゴ(民)、エチオピア、ナイジェリア、タンザニアは、それぞれおよそ2億3500万、2億3800万、3億7400万、1億3900万と、大きな 人口を抱えるだろうと予想されている(表1)。
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これだけの数の人々が消費者であり、生産者であり、政策企画・立案・実施を担う。人的資源は未来を左右する重要な要素だ。

II グリーン・モービリティ

アフリカ製・アフリカの太陽

 アフリカ製の電動バイク、燃料は太陽光だけ(Built in Africa, powered by the sun: The rise of electric motorbikes)―こんな見出しの記事が目に飛び込んできた。
 ケニアでデザイン・アセンブリされた電動バイクが、アフリカ大陸南半分の6ヶ国―ケニア、タンザニア、マラウィ、ザンビア、ボツワナ、南ア―をまたがる6000キロを走り切ったという話題だ(2024年9‐10月)。3週間弱のライドを支えた動力は太陽光だけで、ソーラーパネル10枚を積んだサービス車両が一緒に走った。南アのStellenbosch UniversityがケニアのRoam社と協力して実現したサクセス・ストーリーだ。同社は、電気自動車デザイン・アセンブリのメーカーで、ケニアとスウェーデンのスタートアップ企業である(創業2017年、本社ナイロビ)。
 通勤、通学、デリバリーなど、いまやオートバイは、都市生活のすみずみを支えている。コスパが良く、渋滞にも比較的強い。幹線道路の届かぬ地方では、車が入れないエリアでもオートバイなら届く。しかもバイクをケニアでアセンブリすれば雇用をはじめ経済効果があり、さらに電動であれば、化石燃料への依存を減らし、脱炭素、クリーン・エア、低騒音とグリーン効果も期待できる。
 記事の趣旨は、成功事例を普及し、サステイナブルにしていくための制度上の優遇措置や地域協力強化についての政策提言だ。1年以上も前の実験がいま取り上げられているのは、エネルギー安全保障が改めて問い直されているためだろう。

バスで行こう

 先日、ナイロビにしては珍しくピカピカのバスを見かけた。おしゃれな車体をよく見ると「100%ELECTRIC」とある。電動バスだ。愛称は「BasiGo」―スワヒリ語と英語を組み合わせ「バス+Go」「バスで行こう」といった意味だ(写真(BasiGoから転写))。

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 2023年、最初は2台だった。バスは中国のBYD社から輸入し、これにケニア側のバス運用ノウハウと充電インフラを組み合わせた。ナイロビ市内、既存のバス運航会社に車両をリースし、従来型のディーゼルバスと同じ路線を、同じ価格で走る。乗客にとってはいつもどおりの通勤通学と変わりはないが、車内無料Wi-Fiつきというメリットがある。
 同社のサイトによると、2026年4月現在、134台が市内を走っている。部品を輸入し、ケニアでアセンブリする、バス製造のローカル化も進行中とのことだ。

再エネ大国

 電動車両の燃料となる電気はどう入手するのか。実はケニアは再エネ大国で、いまや総発電量の9割が再生可能資源由来である。
 2023年現在、発電設備容量3,490MWのうち、電源別の割合は、水力25%、地熱27%、火力18%、風力13%、太陽光12%、その他電源が5%であり、年間発電量の割合は、地熱45%、水力19%、風力17%、太陽光3%、火力11%、その他電源が5%である。
再生可能エネルギーの中でも地熱発電のポテンシャルは7,000MWと見込まれており、2008年に策定された開発計画である「ケニア・ビジョン2030」では、2030年までに地熱発電を5,000MWに引き上げる目標を掲げている。この目標達成のための中核となってきたのが、グレート・リフト・バレー(大地溝帯)に位置するオルカリア地域の地熱開発だ。
 オルカリア地熱発電所は、1980年代から段階的に拡充されてきており、現在6つの発電所が稼働している(2025年)。これに対し日本は、掘削、発電所設計、蒸気タービンの技術、運用ノウハウなどにおいて、技術協力と資金協力の貢献をしてきた。日本の技術がケニアに伝えられたことにとどまらず、さらにケニアがその技術を、研修などを通じて近隣諸国に輸出しているとのことである。

III 日本のプレゼンス

貿易の未来像

 以上、アフリカの近未来イメージを描くエピソードを書いた。アフリカが売るのは一次産品か天然資源ばかりで、機械、自動車は、より工業化が進んだ国の技術に頼って、それらの国から買うしかないというのは、やがて歴史の出来事になるのだろうか。
 そんなアフリカで、日本のプレゼンスはどれほど目に見えるのだろうか。近年、援助よりビジネスパートナーとして関係が重要視されてきてはいる。そして、いまでも路上で見かける車両のほとんどは日本車だ。しかし、人々の生活実感としては、家電製品をはじめ、メイド・イン・ジャパンの存在感は、かつてほど大きくはない。上述のように、電動バイクはスウェーデン、電動バスは中国との協業だ。

日本人の数

 外務省によると、2025年10月時点で、アフリカに住む日本人は6592人だ。海外在留邦人の総数は129万8170人、概ね日本人100人に1人が海外在留という計算になるが、うち8割以上が北米、アジア、ヨーロッパに住んでいる。この数字は在外公館に在留届を提出している人の数であり、3ヶ月に満たない訪問・滞在を通じて、現地に深くコミットしている人たちの数は反映されていないが、日本のプレゼンスを示す一つの指標ではある(表2)。
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 また、外務省の海外進出日系企業拠点数調査によると、アフリカに進出する日本企業は現在、約1,000社であるが、その半数が、南ア、ケニア、モロッコ、エジプトの4ヶ国に集中しており、偏りがある。
在留邦人数が100人以上のアフリカの国を表3にまとめた。
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IV 最適のことを

淡々と

 いまのケニア人たちが、家庭やオフィスで照明を使い、WIFIをつなぐとき、電気があるのは地熱発電所で日本製タービンが回っているおかげだとは、おそらく意識していないだろう。日本のODAのおかげだと恩に着せる必要はもちろんない。サブサハラ・アフリカでは大きな人口増加が見込まれるが、そんな未来のアフリカ人たちは、メイド・イン・ジャパンがブランドだったとは、そもそも知ることもないかもしれない。
 アフリカに住む日本人の数は多くはないと書いたが、その一方、何十年も当地で、何らかのミッションなりやりがいなりを見出して、働き続けてきた日本人も、少数ながら、いる。そんな人たちは、往々にして、言葉ではっきり語るわけではないが、その背中で淡々とこう伝えているように思う。
 人と人の間には、時代、場面に応じたステージごとにそれぞれ最適の関わり合いがあるものだ。それに専念さえしていれば十分で、感謝されるかとか、喜ばれるかとかといった評価は、自ずとついてくることでしかないなぁ、と。

ナイロビ在住

参考文献

外務省海外在留邦人数調査統計 (Annual Report of Statistics on Japanese Nationals Overseas) 令和7年(2025年)10月1日現在
JETRO地域・分析レポート、2025年10月14日、アフリカの潜在市場に商機(ナイジェリア、タンザニア、コンゴ民)3カ国の財閥企業が議論
Ministry of Energy, October 2018, National Energy Policy
The Daily Nation, 1 April 2026, Built in Africa, powered by the sun: The rise of electric motorbikes
The Kenyan Wall Street, 8 December 2025, Thermal Electricity Output Jumps 36% to Fill Supply Gap From Low Hydro
JICAケニア国IoT技術を活用したオルカリア 地熱発電所の運営維持管理能力強化プロジェクト業務完了報告書 2025 年2月
https://www.jica.go.jp/information/publication/magazine/mundi/1905/201905_05.html地熱発電:国を支える自然エネルギー ケニア
UNDESA World Population Prospects 2024 Summary of Results

(2026.4.20)
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