■フィリピンの現地から       松田 健

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■2月14日のバレンタインデーにはフィリピンのセブ島にいましたが、マニラのマカティ市やミンダナオなどフィリピン3か所で爆弾テロがあり、11人の死者が出ました。イスラム最大組織であるモロ民族解放戦線(MNLF)の分派であるミスアリ(前MNLF議長で現在拘束中)前議長派を支援しているイスラム過激派アブサヤフが「アロヨ大統領へのバレンタインのプレゼント」と犯行声明。

対してアロヨ大統領は「我々は(テロには)怖気づかない」と断固テロに戦う方針。

 そして2月21日以降に4人のアブサヤフメンバーを相次ぎ逮捕し、その逮捕者を同席させての記者会見で、「東南アジアのイスラム系テロ集団のジェマ・イスラミヤ(JI)から爆弾製造技術を得た」と発表。しかし「フィリピンの軍や警察にはこんな早く逮捕できるような捜査能力などない、茶番劇」とフィリピン庶民の多くが見ています。アロヨ大統領の独裁と腐敗はマルコス時代よりもヒドイというのが大方のフィリピン人の感じ方です。

 2月14日のテロの翌日にマニラに行きました。そこでたまたま乗ったタクシーの運転手らの一般市民と前日の同時テロについて話しましたが、「米国諜報機関と一部フィリピン国軍が仕掛けた自作自演のテロ」だとフィリピン人の見方が一致しているのに驚きました。「米国はかつてフィリピンから撤退した米軍基地に戻りたがっており、それ(米軍のカムバック)を実現させるためには、当面はまずフィリピンの治安をもっと悪くする必要がある」というものです。

 米軍がスービック基地を撤退してからでも米軍艦がスービック基地に入港しての修理が行われてきましたし、最近ではスービック基地に近い広大なクラーク空軍基地を使って米軍を中心としてフィリピン国軍、近隣諸国の国軍部隊が参加する『対テロ訓練センター』が設置される方向にあります。

 もう大好きな フィリピンが めちゃくちゃの状況になりつつあります。

 例えばマニラからスービック基地やクラーク基地の取材は、唯一の北部高速道路(ノース・ハイウエイ)を通ってでかけましたが、この2月から普通車で従来の19ペソ(1ペソは約2円)から146ペソへと8倍近い値上げが実施されましたが、さしたる反対運動や混乱がないのが不思議です。日本の首都高速に当てはめると、700円の通行料金が一挙に5,500円に値上げされたことになるのに。

  アブサヤフはマニラにも10人は滞在しているという報道もあり、2月14日のバレンタインデーの爆弾はバス後部座席で爆発したため、最近の乗り合いバスでは後部座席に乗る人が減っています。またマニラではホテルや大型ショッピングセンターの入り口、高架鉄道内、フェリー港などで爆弾探知犬がいっぱいいます。携帯電話が爆弾に使われていたのですが、GSMシステムの携帯の中のプリペード方式では所有者の特定ができないので契約者を特定できる情報を書き込むシステム導入が計画されています。

 でも以下がもうひとつのフィリピンです。

■このほど国際調査機関のワールド・バリューズ・サーベイが『貴方は幸福か』で世界50カ国調査の結果を発表しましたが、最高はベネズエラの55%で、フィリピンは40%でアジアでは最も幸福度が高い国だとされました。去る2月19日、マニラのデラサール大学で開かれた「第32回日本語スピーチコンテスト」では、日本の老人ホームを見学した経験を話したイザベル・アニエガさん(19歳、ミンダナオ国際大学で日本語を専攻中の3年生)が優勝した。「日本には年配者に必要な施設や食べ物はあるが、一番必要な家族がない。日本は社会福祉の分野でフィリピンの支援が必要で、家族からの思いやりや支えがもっと必要。日本人は年配の両親のことを忘れたのですか。両親を介護することは仕事ではなく尊敬や愛によってなされること。私は日本人の考え方を変える方法を見つけたい」などとスピーチしました。 フィリピンは《松田健》が最高に好きな国のひとつ。いつ住んでもいいとも思っているくらいなんで、なんとか良くなって欲しいのですが、まあ当面はさらに無理って感じです。《松田健》バンコクにて