【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】
サングルポットとカッドゥルパイの冒険㉓
フリーリーはすばやく注意深く、ガーデンの大きな壁の上の貝殻のおうちに、二人ををつれて来ました。そして、フリーリーはそこで、二人のナッツたちと、長い夜をいっしょにすごしたのでした。
夜が明けて朝の光が、しずかに射しこんできたとき、かれらは、そのかくれがを出てゆきました。
“さあて”、とフリーリーはいいました“わたしは、きみたちを学校へつれていこう。あそこはきみたちにとって、まったく安全なところだから。それに、ジョンドーリィは食事のあとは、一日じゅう眠っているから、かれは喰って喰って喰いまくるんだよ。やっと動けるくらいまでね”
“可哀そうなアン、あの人、わたしたちを助けるために、かれと結婚するつもりなの、でも、いずれ、かれは、わたしたちを全部食べてしまうでしょうよ”とほぐれ花が言って泣き出しました。
“泣かないで！”とフリーリーは言い、“もし、ぼくがリトゥル・オベーリアを探しだせたら、だれもきみたちを傷つけることはできないんだよ、考えてわかったよ、おお、急ごう！ きみたちは学校へ行くんだ。そしてなんにも言わずに、ただ子供たちのあいだに座って、レッスンを受けるんだよ。ぼくが、そのうちに君たちを呼びに行くからね。さあ、急がなきゃ、ぼくは、やらなきゃならないことがいっぱいあるからね”
ほぐれ花とサングルポットは、こうして学校で、とっても静かにすわって、魚族のくらしを取り巻いているたくさんの危険について学びました。
ランチの時間には、二人のガムナッツは、小さな魚たちと、ゲームをして遊びました。かれらはガムナッツたちに、とっても愛想よくしてくれましたが、ナッツたちの鼻が珍しくて、じろじろ眺めるのでした。魚たちのほとんどが、鼻というものを持っていなかったからでした。
ナッツたちが、また学校へ行ったとき、サングルポットに、いい考えがひらめいて、“先生！”と手をあげて叫びました。“先生は、リトゥル・オベーリアをご存じですか？”
その先生はとっても親切な人でしたが、悲観的で、サングルポットを悲しげに見て言いました。“ああ、可哀そうな、ちいさなナッツさんたちや。あなたの教育は十分じゃありませんね、ここにいる子供たちはみんな、あのオベーリアのストーリーを知っていますよ”
“ぎょろ目さん”と彼女は大きな女の子のひとりを指名して言いました。“お立ちなさい。そしてこの気の毒な子供たちに、オベーリアのストーリーを話してあげなさい”
“はい、先生”とこたえた女の子は、立ち上がって、ある不思議なストーリーを話しはじめました。
“むかしむかし遠い海のむこうを、一人の美しい婦人が、とっても巨大な船で航海していました。彼女は、大きな権力を持っているけど邪悪な王の奴隷でした。そしてひどく不幸だったので、波間に身を投げたのです。彼女が海に沈んだとき、その魂は彼女から出ていって美しい真珠となりました。そして、3000年ものあいだ、海の底の海藻のあいだに横たわっていました。このことは魚族の本の格別なページに書かれ、そこには「人間族がその近くに住むようになったとき、真珠は百合のように花開き、ちいさな可愛いベイビーが見つかるだろう」と書かれていました。そして「その名は、オベーリア、彼女を愛する者たちにはいっさいのわざわいがなく、彼女はやがて成長し、魚族の女王になるでしょう」と書いてあったのです”
“有難う。ぎょろ目ちゃん、すわってよろしい”と先生は言いました。
“ぼく、その児を捜すことできると思います”とサングルポットが言いだし“でも、もうその児はだれか見つけたかな？”とつぶやきました。
“いいえ、もちろんだれも、見つけてないの”先生はそう答え、“さあ、みんな、こっちに注意して、つぎの授業を始めましょう”といいました。
学校がひけたとき、フリーリーが、サングルポットとほぐれ花を迎えに来て、外で待ちうけていました。そしてみちみち、二人に、かれがしようと思っている計画を話しました。
“いいかい、ベッドタイムの時間までアンのところでおとなしくしてるんだ。それから、みんなが寝ちまったときに、裏の戸口からこっそり出て、公園の入り口までおいで。ぼくはそこで待ってるから”
“ようし、フリ―リー、きみに言われたとおりにするよ”二人は声を合わせて言いました。“ぼくたちなんでもきみの言うとおりにするよ。おお！ とってもエキサイティングじゃない！”
そしてかれらはアンのところへ走って帰りました。
その夜、サングルポットとほぐれ花は、みんなが寝静まったころ、そっと貝殻のおうちから降りて外に出ました。
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さあこれから何が起こるのでしょう。ギブスの童話では珍しいミステリアスな話になりました。
（エッセイスト）
(2021.09.20)
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