【オルタのこだま】

鈴木先生への質問

ジョアキム明日香


 初めてメールさせていただきます。突然のメール失礼いたします。

 この度は鈴木宏昌早稲田大学名誉教授の記事修正をお願いしたく、メールいたしました。
 下記の記事になります。
オルタ第110号(2013.2.20)フランス・パリ便り(その6)フランスの老人ホーム事情
  http://www.alter-magazine.jp/index.php?%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%80%81%E4%BA%BA%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E4%BA%8B%E6%83%85

 「まず、第一は介護の実践部隊であるヘルパー(准介護士)の数と提供される介護サービスの内容である。フランスの准介護士は1年間の教育・訓練を要する国家資格だが、医療関連の職種ではもっとも低い資格とランクされている。給与水準は低く、看護師などの他の資格を得ない限り、昇給の見込みはない。ネットの情報で見ると、ヘルパーの給与相場は最高で1600ユーロとあるので、わずかに最低賃金(1430ユーロ)を上回る程度でしかない。そのため、外国人や海外領(カリブ海の島やレユニオン)出身者が多いのが実態の様である。」

 まず私の自己紹介からさせていただきますと、31歳、日本人女性です。日本で知り合いましたフランス人の夫と結婚し、パリへ移住し現在8か月目であります。

 オーストラリアにて介護士の資格を取得し働いていた経験がありましたので、フランスの介護事情はどうなのか、と調べていたところ鈴木宏昌名誉教授の記事を見つけて読ませていただきました。
 また YOUTUBE にて「迫るフランス大統領選と左翼の混乱」、『新鐘』の「労働経済学」も非常に興味深く拝見いたしました。
  https://www.youtube.com/watch?v=gr9JYEr6438
  https://www.waseda.jp/student/shinsho/html/65/6530.html

 さて、次に私の夫につきまして紹介させていただきます。夫はフランスの海外県カリブ海の島、グアドループ出身、祖先は植民地時代の黒人奴隷になります。

 念のためにお伝えしておきますと、フランス海外県カリブの島の人々はフランスパスポートを持ち、フランスの選挙権を持ち、国会議員も選出され、教育もフランス本土と変わりのない、れっきとしたフランス国民であります。夫はフランス人の自覚がありますし、友人、家族に聞きましても自分はフランス人だと答えます。外国人、移民、ダブルナショナリティではございません。多くの人は有色人種です。

 本題に入らせていただきますと、本文の中に「外国人や海外領(カリブ海の島やレユニオン)出身者が多いのが実態の様である」という表現がありますが、これはどこからの情報なのでしょうか。

 「日本であまり老人ホームの施設に行ったことがない私なので、日本との比較は難しいが、多少とも内側から見たフランスの老人ホームの状況を報告して見たい。私が実際に何回か見た老人ホームは、母親のいる施設ともうひとつ、家内の知り合いが入居しているパリの老人ホームと老人住宅だけなので、その点は容赦していただきたい。」とございますが、個人的なご見解なのでしょうか。

 この表現は日本でいえば、「東京の老人ホームでは沖縄、北海道出身者が過酷な状況の中、低賃金で働いているのが現状である。」アメリカでしたら、「ハワイ、グアム出身者、もしくはアフリカ系アメリカ人」といった表現になりますか。教授はこの表現をフランス語にて開示することが可能でしょうか。悪気はないと存じますが、これはラシズム発言であります。もし教授が日本で日本人に対して同じような記事を出されてたらどうなるでしょうか。

 島国の日本は海外の情報があまり入ってこないと個人的に感じております。インターネットが普及しグローバル化された現時代におきましても、日本人のフランス人に対するイメージは「白人」というイメージが強くあるのが現状です。

 私は自分の夫を紹介する際「フランス人だけどカリブ出身の黒人」と付け加えております。そうしないと、相手の衝撃が大きすぎるからです。時には「フランス人なのに白人じゃないの」といった残念な発言を受けることもございます。

 教授の発言は影響力がございますので、この記事の「フランスの准介護士は1年間の教育・訓練を要する国家資格だが、医療関連の職種ではもっとも低い資格とランクされている。給与水準は低く、看護師などの他の資格を得ない限り、昇給の見込みはない。ネットの情報で見ると、ヘルパーの給与相場は最高で1600ユーロとあるので、わずかに最低賃金(1430ユーロ)を上回る程度でしかない。そのため、外国人や海外領(カリブ海の島やレユニオン)出身者が多いのが実態の様である。」の部分は日本人へラシズム的な考えを助長しかねないと思うのです。

 低所得者・低学歴=海外県出身者・外国人。日本人からみて、海外県出身者はフランス人と認められないのでしょうか。それとも黒人と白人といった分け方をされているのでしょうか。夫は黒人ですがフランス人です。教授の奥様はフランス人とのことですが、フランス人の奥様を持ちながらもこのようなお考えであるのは非常に残念でなりません。

 まだ私共に子どもはおりませんが、もし将来の子どもがこの記事を読んだ場合、教授のような影響力のある日本人がこのような表現をされておりましたら、悲しむと思います。

 早急に記事の修正を強く希望いたします。
 ご理解の上ご容赦いただきますようお願い申し上げます。

ジョアキム明日香さま、 ) 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧