【オルタのこだま】

メルボルンから  2007のお正月に     入江 鈴子

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 加藤様 お達者でおられますか、新年おめでとうございます。お蔭さまで私も
来豪以来3度めの正月をメルボルンで迎えました。
 日本のニュースの帰省やUターンラッシュ、各地での正月の様子をTVに見な
がら私は祈っておりました。同胞愛というか、愛国心というか、うまくは言えま
せんが・・決してセンチメンタルなものやノスタルジックなものではありません。
長年日本を離れ日本を外から見てきましたが、近年特にあまりにも悲惨な母国の
現状に私は言葉を失い考えこんでしまう・・その後に込みあげてくる祈り・・で
す。

 加藤さん60年ぶりの会話でしたね。思想の芽生えと求道の青年期を、私達は
敗戦という歴史的激動期に直面しました。そうした時期に出会い抱負を語り合っ
た当時の仲間達は今も私の中に生きています。その殆どが議員になり今は他界し
た人達も多いことを岐阜の升原さんから聞きました。看護婦の道を選んだ私は、
仲間とは疎遠になり独り我が道を生きておりました。

 あれ以来60年の歳月が流れ、人生のラストステージを生きている今御縁があ
っての私達の邂逅です。たとえ生き方は違っていても、あの青年期に出会った時
に求めていた道と同じ道を、目的にむかって草の根に生きてきた当時の仲間達の
ことを知りました。当時の青年達が秘めていた、枯れることのない青春を感じて
感動せずにはいられませんでした。加藤さんの電話を切った後、私は60年とい
う自分の足跡を見つめていました。

 同封しましたのは、日本のダンス雑誌に送っている私の小文です。日本の社交
ダンスのあり方に疑問をもっている私は、社交ダンスの効用を福祉に取り入れて
いる英国はじめヨーロッパの先進国の様子を、1994年以来私の体験をリポー
トしてきました。が、最近になって投稿先を変えることを考えていた矢先に、加
藤さんからお誘いを受けてこれも御縁なのかナーと思いはじめている次第です。
 そして、ここ何ヶ月かオルタを読んで感じたことのひとつに、オルタの投稿者
どおしのcommunicateができている暖かさが伝わってきました。このことは、
お互いに会って云々という意味ではありません。うまく表現できませんが・・言
い放し、書き放しではなくresponseがなされているからだと思います。この暖
かさは、書くことに自信がない、にも拘わらず伝えたいことがたくさんある、と
苦しんでいる私を大変励ましてくれます。

 現在私は、自分の地域のシニアグループに参加しており、その中の組織のひと
つであるアルツハイマー協会主催のダンスパーティーのお手伝いをしています。
それと中国人コミュニティのシニアクラブの社交ダンスの仲間とダンスや学習会
を通して多くのことを学びました。上海、南京の出身者が多く、第二次大戦と文
革を生き抜いてきた7,80世代です。

 日本も中国も同じく言えることは、その国の将来を考える時に重要なことのひ
とつとして、シニア世代が人間としてどのような価値観と哲学をもっているか、
また、若い世代に何を遺産として残そうとしているかを知ることだと私はおもい
ます。このことは英国にいた時も感じていたことで、私にとって興味のある勉強
材料になっています。中国の生活現場を伝えておられる佐藤さんの記事に共感の
拍手を送りながら読んでいます。

 現在私は、中央公論、論座、世界そして諸君、V0ICE、文芸春秋などバランス
よく読むようにしていますので、かなり日本の現状を知ることができます。こち
らのメディアは日本のような米国経由ではなく、世界各国のニュースを直接知る
ことができます。
 
 加藤さん、また連絡します。どうかお体に留意されて『オルタ』を続けられて
下さい。富田さんに宜しくお伝えください。
            (2007年1月 メルボルンにて  入江鈴子)

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