【コラム】酔生夢死

AKBにでも入るか

岡田 充


 「腑に落ちない」ことは結構ある。最近でいえば、秋篠宮家の次女で成人になった「佳子さま」を、メディアが異常にプレイアップしているのもその一つ。女性週刊誌が毎週のようにトップ記事ではやし立てるだけではない。「週刊文春」「週刊新潮」も、皇室晩餐会や公務出張の記事をトップないし準トップで報道。グラビアでも「山口(進水式)に笑顔をもたらした愛らしきプリンセス」(週刊文春)と持ち上げた。
 なぜ今、「佳子フィバー」を作り上げるのか、腑に落ちない。新聞記者上がりの大学の同僚に昼食を食べながら聞いてみた。彼は第1に、皇室の他の女性に比べ「可愛いい」こと。第2に、英国のウィリアム王子とキャサリン妃のように「仲睦ましい」関係をモデルに、日本でも新たな「皇室物語」を作ろうとしているのでは、と分析してくれた。

 第1の理由に異議はない。皇太子夫妻の長女や、「ヒゲの殿下」として知られた故寛仁氏の娘たちに比べると、確かに可愛いい顔立ちだ。母親似なのだろう。ただあの程度の「美形」なら大学にもいくらでもいる。「可愛い」だけが理由とも思えない。
 第2の、英国をモデルにした「皇室物語」のシンボルはどうか。ウィリアムはチャールズ皇太子の長男で王位継承順位第2位。日本の皇室典範は女帝を認めていないから、皇位継承順位は第1が皇太子。次いで秋篠宮。そして第3位が秋篠宮長男の悠仁クンだ。彼が天皇になっても、佳子ちゃんはお姉さんの一人に過ぎない。「皇室物語」のプラスのシンボルになるか?

 同僚は挙げなかったが、メディアが持ち上げるもう一つの理由は、皇室の「内輪もめ物語」の新たなキャラ作りにあるのではないか。今は「可愛い」アイドルでも長続きはしない。既にその兆候は出ている。佳子ちゃんが転校した国際基督教大学(ICU)の合宿で、彼女がホットパンツ姿をさらしたことを、母親が厳しくとがめたこと。
 皇室ウォッチャーのブログはもっと生々しい。前の学習院大学で佳子ちゃんは、ほとんど授業に出ておらず、1年の夏休み前から追試の呼び出しを受け必修科目も落していた、と書く。さらに「雑誌メディアは、愛子さま雅子さまのマイナス情報ならどんな根拠のない噂でも喜んで記事化していますが、悠仁さまの不登校の噂、佳子さま眞子さまの成績不振の噂、高校時代の悪行による停学の噂などは記事化もしません」と暴く。

 このブログ内容が事実かどうかは知らない。しかしブログ氏が期待しているのは、週刊誌によるバッシングが続く雅子さんと愛子ちゃん親子と、「新星」佳子ちゃんによるイメージ・バトルと「内輪もめの構図」だろう。昭和天皇の死去後、メディアの皇室批判は常態化し、その内輪もめは「消費の対象」だ。佳子ちゃん、あまり勉強は好きではないようだけど、心配は要らない。メディア報道に嫌気がさしたらAKBにでも入れば。皇室離脱して。

 (筆者は共同通信客員論説委員)


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