【日本と韓国の間で】

■韓日連帯の架け橋に               金 正 勳

 ――『海峡の両側から靖国を考える』の翻訳を終えて――
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 今から何年前のことであろうか。
 私が日本留学から帰国して既に10年を過ぎている。
 日本留学の経験のある私としては、韓日友好の架け橋になることなら何でも積
極的な姿勢で取り組みたいと思ってきた。
 ところで近年日本で靖国神社参拝、憲法改正、教科書歪曲などの問題が起り、
東アジアで緊張が高まっている。如何にすれば正しい韓日関係が成立できるか。
如何にすれば韓日交流が深まるだろうか。日本で学んで帰国し、韓国の学生を教
える学者として日韓問題に関しては義務感を感じずにはいられない。
 
小泉首相の靖国神社参拝で韓日関係がジグザグの状況に陥った時、われわれ文
学研究者も現実を見つめ、それに助力する方法はないか考えるべきだと思った。
 私は2005年7月4日、韓国の日刊紙『京郷新聞』の時論に「日本総理、神
社参拝強行するのか」と題して、総理の靖国神社参拝を支持する自民党議員らの
集いに、懸念の意見を発表したことがある。
 また2005年10月7日、大阪高等裁判所で大谷正治裁判長が小泉総理の靖
国神社参拝を公的行為に認め、政教分離原則に背いたという論理で違憲判決を下
した時には、同じ紙面で「喜ばしい日本内良心の声」と題して、歓迎の弁を述べ
ている。そして、以後一貫して日本右傾化に対し、日本の良心勢力との連帯を訴
えてきた。

 恩師高沢英子先生から『海峡の両側から靖国を考える』という本を贈って頂い
たのは、去年の秋頃であった。今も本質的にはそれほど変わりはないだろうが、
当時小泉政権の国家主義政策は、東アジアで和解を求めず、独善的な態度を見せ
ていた。韓日の学者が「靖国問題」について率直に意見を交わし、その問題を解
決するため工夫する内容を込めているそのテキストは、非常に我々に刺激を与え
てくれた。韓日懸案になっている靖国問題を真剣に考えることを目的に、韓国の
読者にそのテキストの内容を伝えたく、翻訳し始めた。
 ちょうど私が所長として勤めている全南科学大学日本文化研究所には、日本の
大学の教授だけではなく、国内の研究者も所属しているが、翻訳に参加した共同
研究員二人は私と意見を交換しながら必死に翻訳に没頭してくれた。

 今回いよいよ初稿が出来上がり、出版社交渉の段階に入っている。辞書を引き、
またインターネットで靖国関連の人名を一々確認しながら作業に取り組んできた
日々を振り返ってみると、感慨深いものがある。この場を借りて、光州大学外来
教授パクスンオン先生と、全南大学ホンドウピョ先生にまず感謝の言葉を申し上
げる。
 なお、初稿が出来上がるまで色々な疑問に対応して下さった阪本先生、韓日交
流に基づき、巨視的な視点から著作権に関して快く許諾して下さった<オルタ>
の代表加藤宣幸様、また河上民雄先生、西村徹先生をはじめ、著者の先生方にも
心からお礼を申し上げたいと思う。

(筆者は全南科学大学日本文化研究所・所長)
 
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