【沖縄の地鳴り】

見逃せぬオスプレイの事故

               
                           平良 知二


 夜、自宅の庭に出ていると、時折、米軍のオスプレイの飛行音が聞こえる。音がやや独特なので、すぐ気づく。見上げて、やっぱりオスプレイだと確認する。翼(?)の2か所が点滅するので、夜であっても分かりやすい。
 同時に、いま何時か、と時間も確認する。だいたい8時~9時。たまに、ぎりぎりセーフの10時直前の飛行もある。

 オスプレイの夜間訓練は午後10時までと決められている。私自身のこれまでの自宅観察(?)ではその時刻は一応守られているが、別の地域では「午後10時まで」の取り決めがたびたび破られている。住民から時間外騒音報告が市町村などに寄せられ、県などが何回も抗議している。しかし米軍は聞く耳を持たず、一向に改善しない。

 普天間飛行場に配備されているそのオスプレイが、遠くオーストラリアの海で訓練中に墜落した(8月5日)。乗員26人のうち23人は救助されたが、3人の海兵隊員が死亡した。輸送揚陸艦に着艦しようとしての事故といわれ、艦に接触した可能性がある。詳しい原因は明らかにされていない。過去のオスプレイ事故の中でも大きい犠牲、被害だ。

 普天間飛行場のオスプレイは昨年12月、名護市の東海岸に墜落している。今回は遠い外国での訓練とはいえ、連続しての重大事故である。オスプレイは欠陥機ではないか、と危惧する県民の危機意識はかなりのものになっている。普天間飛行場からは離れている我が家(直線距離で6キロほど)上空でも飛行をよく見るのだから、頻繁に離着陸がある飛行場周辺の住民の恐れは相当であろう。

 この事故の2日前、キャンプ・ハンセンがある北部・宜野座村の上空で深夜、オスプレイ3機が旋回訓練をしている。午後10時~10時50分ごろだったようで、明らかな取り決め違反である。住民は「テレビが揺れるほどの振動だった」と旋回の激しさを語っている。あるいはオーストラリアに遠征する前の直前訓練だったのかも知れないが、理由は何であれ、県民・住民との約束がいとも簡単に反故にされる現実がある。

 米軍の事故の多さは、この約束違反と無関係ではあるまい。住民と“同居”する基地であるのだから、住民の理解なくして存続は難しく、住民生活の安全、平穏を第一に据えて自らの行動を律すべきというのが基本だろう。米軍幹部はたまにそういう趣旨の発言をするのだが、実際は軍事優先で、我がもの顔に空を飛び交っている。
 海兵隊員たちは訓練スケジュールに追われているのではないのか。オーストラリアの事故死3人のうち1人は10代の若者であった。遠くの地で息子を失った家族の悲しみを思う。軍隊とはいえ「安全」が優先である。住民の安全への配慮を欠く姿勢が、事故を誘発していると思われてならない。

 沖縄県と日本政府がオスプレイの飛行停止・飛行自粛を申し入れたが、米国防総省は聞き入れず、事故からまだ2日しか経っていない7日には、普天間飛行場からオスプレイが飛び立った。在沖米軍のトップ、四軍調整官は「オスプレイは沖縄に限らず世界中で飛んでいる」と飛行停止の要求をはねつけ、8日も深夜の10時45分ごろまでオスプレイが飛行しているのが確認されている。

 「世界中で飛んでいる」などと“世界の警察官”を誇ったような物言いは、一定地域の事情など関係ないという傲慢さの表れである。米軍の沖縄に対する本音なのだろう。地域の安全、安寧への気配りがない。北朝鮮と緊迫した状況が続いているとはいえ、いやそれだからなおのこと、今の米軍の姿勢では第2、第3の事故を恐れる。

 (元沖縄タイムス編集局長)

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