【編集後記】 

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◎ 政権崩壊の過程に入り、解散する力もなく、ずるずる居座っている不人気麻
生首相の背後で安倍晋三などタカ派は北朝鮮の動きに乗じてここぞとばかりに蠢
動している。そして、あの前空爆長田母神俊雄は「核武装論」を叫び、彼の本は
良く売れ、講演会は人気だという。民主党の中にも「敵基地攻撃能力保有論」を
主張する「次の内閣」防衛相浅尾慶一郎なる人物も現れた。彼等は、日本をどこ
に向かわせようとするのか。九条は守れるのか。これらについて『日本核武装を
煽るピエロの「タモちゃん」』として元朝日ジャーナル副編集長深津真澄氏に論
じていただいた。

◎ 経済危機に見舞われた世界で、今、ドイツが注目されている。実体経済では
日本以上に輸出依存度が高く、大きな金融ダメージも受け、日本の4.8%と比べ
、7.4%と高失業率でもある。しかし、なぜか国民生活は落ち着いているという
。ILOによれば日本では失業者の77%が失業手当を受給できないのにドイツは
13%である。(ちなみにカナダ・米国57%英国40%フランス13%)ドイツの数字
は明らかに日・米・英型と違っている。これは戦後「ドイツ民主主義」がワイマ
ール共和国崩壊の内的要因から多くを学んだのに比べて崩壊直前の政権が三分の
二議決を乱発し、議会制民主主義の機能さえ麻痺させている「日本型民主主義」
とのレベルの差とも考えられる。

これらについて東海大学名誉教授前島巌氏に「民主主義の危機―ワイマール共和
国の教訓」で「民主主義は国民が確固とした意思と賢明さを持って護らなければ
脆くも崩れさる」と「日本型民主主義」の危機を指摘していただいた。
  今年は日・独両国とも総選挙の年だが、破綻した新自由主義後の行くえを占う
意味でも自公政権とともにメルケル政権の帰趨にも注目したい。

◎ 今月の書評では関良基・向虎・吉川成美共著の「中国の森林再生」―社会主
義と市場主義を超えて-を牧衷氏に取り上げて頂いた。関氏は「オルタ」の執筆
者で気鋭の研究者である。
ご自身のブログ(http://blog.goo.ne.jp/reforestation/m/200712
   では広い分野にわたって、オルタナテーブの立ち位置から活発に発信されて
いる。「中国の森林再生」問題はいろいろな意味で多くの日本人に関心が高い。
しかし「中国は2000年から05年まで年間平均406万haの森林面積を増加させて
いるが、これは世界で森林面積を増加させている55カ国を合計しても150万haし
かならない(FAO報告書)のに比べ大変大きな面積」など本書が指摘する事実
は余り知らない。しかも、これがどのように実現し、その課題は何か。となれば
さらに知られていない。私たちは、まず事実を認識しなくてはと思う。

◎ 今月は久しぶりに高沢英子さんと、今井正敏氏から「エッセー」と「オルタ
のこだま」にそれぞれ寄稿があった。高沢さんは「森」の大切さを述べらたが、
偶然、書評の「中国森林再生」と「森」がテーマになり、今井氏の『「朝日ジャ
ーナル」復刊の喜び』は、たまたま元朝日ジャーナル副編集長深津真澄氏の寄稿
と重なった。

◎ 催し案内では「オルタ」連載執筆者で姫路獨協大学名誉教授の初岡昌一郎氏
が主宰する第3回「安東自由大学」と同じく連載執筆者の荒木重雄元桜美林大学
教授が会長の「社会環境フオーラム21」第5回公開セミナー案内を載せた。「
安東自由大学」の申し込み締め切りは7月15日に迫っているが「オルタ」読者の
積極的な参加を勧めたい。 

◎「オルタ」15号(04年3月号)で「コラム」として始まり、34号(06年11月
からは「臆子妄論」というタイトルになって通算50回、1回も休みがなく連載
されてきた大阪女子大学名誉教授西村徹先生の「臆子妄論」が今月は残念ながら
休載となった。  西村先生は去る5月に大動脈瘤の手術をされ、幸い手術は成
功し元気になられたが、現在は他の病気を併発され通院加療されている。読者各
位とともに1日も早い快癒を願い、今まで通り英文学の深い学識に根ざしつつも
読み易く、格調の高い健筆を振るっていただきたいと思う。

◎訃報。 
  「オルタ」編集協力者の吉竹康博氏(享年72歳)が6月7日に急逝された。氏は
国際キリスト教大学在学中から社会科学研究会や社会主義青年同盟など学生運動
で活躍し、卒業後は(株)写研に入社、後に独立し(株)ジャット社長として活躍さ
れました。 謹んで哀悼の意を表します。

◎お詫び
「オルタ」は創刊以来、毎月20日発行を厳守してきましたが65号では一部読者
に送信の乱れが発生し、何人かの読者から不着のご連絡をうけ、個別に再送しま
したが結局24日に全読者に再送することになりご迷惑をかけました。原因を究明
し再発しないよう努めますのでご海容下さい。

                        (加藤 宣幸 記)

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