【編集後記】 

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◎ 『アジアサイエンスパーク』という言葉については聞きなれないという読
者が多いと思う。是非この際、これについての認識を深めて頂きたい。私はかっ
て久保孝雄さんが神奈川県副知事から「かながわサイエンスパーク」の運営会社
(株)ケイエスピー(資本金45億円・うち県・市・開銀各5億・他は民間43
社出資)の社長に就任され、4期8年を常勤社長として勤められて黒字会社に転
換し、後に総事業費650億円規模まで発展させられたことについて、会社を訪ね
、事業の概要をお聞きしたことがある。日本の将来が知価型産業の興隆にかかっ
ているとすればベンチャー企業を卵のときから抱き育て飛び立たせるという、こ
のサイエンスパークが果たす役割大きい。この理念・システムを神奈川県から学
んだ東アジア主要国はすでに質量ともに日本を越えて発展させている。

◎ 近年江戸時代の再評価が進み、予想以上に高かった教育文化水準や循環生
活型大都市江戸の実像などに新しい光が当てられ、「閉鎖的な封建制国家」と一
口で切り捨てるような史観の呪縛から放たれたことは結構なことである。しかし
、多発した農民一揆の実像などにも目を向けないと歴史認識を間違える。その観
点から荒木傳氏の研究『「大塩平八郎」(森鴎外)に見る明治大逆事件の影』(
上)をお読み頂ければと思う。本文は3回に分載の予定である。荒木傳氏は戦後
長い間、大坂を中心に社会運動に取り組まれたあと日本社会文学会理事として活
躍し、多くの作品を発表された私たちの旧友で、この研究論文は大塩事件研究会
の機関誌『大塩研究』59号(9月号)に掲載予定のものを少し早めに「オルタ」
に頂いたもので関係者のご好意を謝したい。

◎ 書評は「近代日本の分岐点―日露戦争から満州事変まで」深津真澄著・ロ
ゴス社刊を船橋成幸氏に取り上げていただいた。著者は元朝日新聞政治部練達の
記者として活躍された方で、日本を亡国の淵に追い込んだ戦争の真因と、それが
なぜ防げなかったかについて現代史の謎に鋭く迫られている。評者の船橋氏はか
って飛鳥田一雄横浜市長のブレーンとして革新市政の確立に苦闘し、多くの実践
的政治経験をもたれている。
 
◎ 去る7月19日、新横浜駅前の生活クラブ神奈川の別館『オルタ館』で「新し
い社会研究会」があり出席した。この会は、戦前の社会運動家故藻谷小一郎氏を
記念した基金で運営されている珍しい研究会ですでにパンフレット「新社研」を
26冊も刊行している。この日は早稲田大学坪郷実教授の『日本政治の「第三の
道」を考える』が報告されたが久保孝雄・初岡昌一郎・舟橋成幸・横田克己氏ら
メールマガジン「オルタ」のレギラー執筆者のほか読者で旧総評常任幹事の福田
勝氏などが顔を揃え、懇親会は談論風発となった。ちなみに会場の『オルタ館』
(オルタナテーブ生活館)は地下1階地上5階のビルで元生活クラブ神奈川の本部
があった建物だが、本部は手狭になって近くに移転し、このビルは各種会合や新
しい運動の拠点として使われている。
 
◎  先号で毎号連載して頂いている『臆子妄論』が著者の体調不全によって
当分休載になると予告しましたが、本文の「前口上」にあるように休載にならず
従前のように連載されることになりました。西村先生の健康回復を心からお喜び
するとともに、引き続き「オルタ」に健筆を振るって頂く事を読者とともにお願
いしたいと思います。
  私が8月16日から22日まで「オルタ」レギュラー執筆者初岡昌一郎氏が主宰
する韓国・「安東自由大学」に参加のため、「オルタ」の20日発信と重な
り、やむを得ず何本かの今号掲載予定原稿を次号に回すことになり、執筆者・
読者に迷惑をおかけました。深くお詫びいたします。
  今年も猛暑が列島を襲っています。これが異常な暑さでなく普通なことになる
気配ですが皆様の健康をお祈りします。

                           (加藤 宣幸 記)

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