【編集後記】
◎戦後史のターニングポイントになるかもしれない参議院選の開票結果を伝えるマスコミのオドロオドロしい「改憲勢力3分2」の見出しを眺めながら、これが日本の現実かと思いつつも、さらに目をこらすと、本号でオルタ編集委員仲井富氏が詳しく分析しているように、沖縄・福島という政権の基地・原発政策がストレートに問われた最重点県で現職閣僚2人が落選し、特に沖縄では政権側が町内会に直接交付金を配るなどあらゆる力を動員して強力なテコ入れをしたにもかかわらず、新基地反対を真っ向から主張する伊波氏がなんと10万票の大差で自民公明お維新3党が推す島尻沖縄担当相を破っている。そして前回は2人しかとれなかった一人区で、野党共闘が実に11人当選し、愛知・東京・北海道などでは民進党が2人当選を果たすという全く別の風景が見えてくる。
◎昨年の安保法制反対運動から参議院選まで学者・市民団体の立場から野党共闘を推進し、自らも先頭にたって獅子奮迅の活躍をされた政治学者の法政大学山口二郎教授にオルタ編集委員の北岡和義氏が緊急インタービューし、折から始まった東京都知事選への取り組みなども踏まえ、選挙の総括と野党共闘の在り方などをお聞きした。
◎国内ではオカルト的な「日本会議」にあやつられ改憲の意欲を隠さないアベ政治。海外では英国の国民投票。米国の大統領予備選。『民主主義ってなんだ』と何か虚しさを感じさせる当今だが、選挙結果を見ながら自分はデモに参加し一票を投じはしたが、と考えながら最近のある発言を思った。それは先月オルタのYouTyube 企画（リベラルとの対話シリーズ）で藤井裕久さんと阿部知子さんが対談（文章は本号掲載）した時のものだ。
◎今、妙なことに、生前の田中角栄を口汚く罵倒したあの石原慎太郎が突如、角栄を褒めちぎる本を出し、数十万部の売れ行きで、時ならぬ角栄ブームが起きている。藤井さんは田中総理の時に官房長官秘書官として官邸にいたが、石原や安倍晋三が所属する「青嵐会」から日中国交回復をやった田中派の連中は「みんな叩き殺す」と脅されて本当に怖かったこと、「戦争を知らない議員ばかりになると日本は危ないぞ」という角栄さんの言葉を引いてアベ政治を強く批判した。そして自らの戦争体験や、戦後自民党政治の中で安部晋三が決して主流でなかったことなどの歴史を知らない若い国会議員たちに党派を超えて伝えたいと『近現代歴史調査会』を立ち上げて十何年も活動していることを話された。さらに老政治家は民主政治に一票を投じるだけでなく、自分で出来る小さなことでも実際に取り組むことがいかに大切かを語り続けられた。
◎6月23日の英国・国民投票は「まさかの離脱（Brexit）」となり、世界が震撼し日本にも衝撃が走った。私たちはこの事態をどのように考えるべきか。オランダに在住し、ヨーロッパと日本を駆け巡りながら世界の教育と社会を研究される研究者（オルタ編集委員）リヒテルズ直子さんに緊急レポートをお願いした。日本のメディアの多くは、日本経済への影響という狭い視点から捉えがちだが、それでいいのか。リヒテルズさんは直近の英国政界のドタバタにも触れ、事態の経過・各国の反応の冷静な分析だけでなく、顕在化した4つの問題点（1）フリーマケットか人権か（欧州連合の存在意義をどこに認めるか）（2）西欧と東欧？（3）エリート政治家への不信（リーダーシップ教育の問題）（4）ポピュリズム拡散の責任は誰に？（マスメデイアの責任）を指摘するとともに、「日本は大丈夫か」として日本がいかに対応すべきかを明快に論じられた。ぜひ読者の皆様には単なる評論ではないこの骨太の論考を読んでいただきたい。
◎6月14日東京都知事選が告示され、野党4党は鳥越俊太郎氏を統一候補として共闘を組む。自民は分裂し野党に勝機がある。是非とも鳥越氏を勝たせて都政を都民の手に取り戻し政治の流れも変えたい
◎【日誌】6月22日：神楽坂・南丘喜八郎・仲井富。23日：自宅・金子達昭。調布・荒木重雄。26日：自宅・家族会。27日：区民検診。28日：内神田・大河原雅子励ます会・小枝すみ子・岩佐りよう子。
7月5日：東洋学園大学・講座。7日：自宅・阿部真彩・南雲智・野沢汎雄。8日：自宅・卜部ミユキ・奥山恭代・野沢汎雄。11日：自宅・仲井富。12日：東洋学園大学講座・福川伸次。連合会館・社会運動ユニオニズム研究会・沖縄基地闘争の現状と展望。13日：仏教に親しむ会・本門寺・竹中市雄・浜谷淳。14日：議員会館・動画取材・山口二郎・北岡和義・桑原昌之・阿部真彩。懇談・近藤昭一・阿部知子。16日：築地・小林吉雄。
■【今月のオルタ動画案内】
YouTube 配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine
◎「リベラルとの対話」シリーズ 藤井 裕久・阿部 知子
◎「仏教に親しむ」シリーズ 荒木 重雄
◎肥田医師被ばく体験記朗読（英文） 金子 達昭