【編集後記】

加藤 宣幸


◎9月17日、安倍政権は、国民多数が反対し圧倒的多数の憲法学者、歴代の法制局長官や最高裁長官OBまでが厳しく違憲を指摘するなか、平和国家の国柄を変える安保法制の採決を強行した。歴代保守政権が数で押し切る局面を幾度か見たがこの内閣のやり口は、法案の賛否を超えてもっとも筋が悪い。民主政治とは手続きである。「改憲」は一つの政治的主張だが、それが難しいからと、70年も積み上げた憲法解釈を変えるやり口は、立憲政治を根底から覆すものだ。これには改憲論者さえ怒る。この「安倍政治」とは何か。リクルート事件などで敏腕を謳われた元日テレ政治部長菱山郁郎氏が厳しく論じ、「安保法制」成立後を元朝日新聞政治部長羽原清雅氏が考察し、「月刊日本」主幹南丘喜八郎氏からは独自の立場から安倍政権の本質を衝いて頂いた。

◎安保審議が参院に移っても、安保法案に反対するデモは連日のように国会を包み全国に広がったが、特に8月30日の国会周辺は押し寄せる人波(主催者発表12万人)で埋まった。車道まで人が溢れ、体力に自信がない私などはとても地下鉄出口から国会正門付近までは近づけない。むせ返る人々の熱気に‘60年安保の昂揚を想う。当時、労組は全国動員を波状的に組織し、「全学連」は国会南門を突破すべく警官隊と衝突を繰り返す。ついに6.15には樺美智子さんの死を招く。デモは激しい渦巻きデモから、やがて都心のフランスデモに広がり、昂揚するデモ隊に沿道の市民も手を振る。しかし岸首相は院内に警官隊を導入し、デモ鎮圧には自衛隊の出動を命じるが防衛庁長官赤城宗徳は断固拒否する。赤城氏の体を張った「抗命」によって日本は『天安門』にならなかったのだ。

◎いま、国会の周辺で警官隊との激突はない。組合旗に代わり市民は手づくりのプラカードやコンビニで打ち出した統一ポスターを掲げる。女性の姿も目立つ。学生は自治会ごとでなく「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動)としてネットで呼びかけ合う個人参加だ。'60年の頃、市民のデモ参加は難しかった。わずかに鶴見俊輔氏らがはじめ、後に「ベ平連」となる「声なき声の会」の旗の下に少数の市民が集った。デモは明らかに組織主導から市民の政治意思表現の場に変わった。これは市民社会の成熟を示すが、反面では小選挙区制で歪んだ権力の暴走を許している。

◎私たちは一人ひとりの市民の声を政治的な力に変えなくてはならない。今回の安保反対運動の大きな特徴はデモの新しい形を創っただけでなく、各種の市民運動(NPO)が一つの目標のもとにネットワークを形成し、特に政治的無関心と言われた若者が参加したことだ。かねて日本のNGO・NPOは良し悪しを別に戦略的視点が弱いと言われていた。

◎ところが沖縄の自然保護運動をはじめ全国の反ヘイトや脱原発など、多くの市民運動が沖縄の置かれた歴史的不条理に反対し、それが「民意を無視し平和国家を壊すな!」という目標にまとまり、憲法学者を先頭に多彩なグループが国会周辺だけでなく地方やニューヨークでもデモや集会を始めた。特に注目したいのは立憲主義・生活保障・安全保障に明確なヴィジヨンを示し、政治的には包括的なリベラル勢力の結集を強く訴える学生の運動「SEALDs」(本号【運動資料1・2】参照。http://www.sealds.com/)である。社会の未来を拓くのは常に若者だが特に学生の動きは大きな意味を持つ。彼らは保革の壁を越えて翁長知事を実現した沖縄に学ぼうと主張する。私たちの「オルタ」は創刊11年と若く、ささやかな手づくりの市民WEBメディアだが、リベラルを志向し、平和と民主主義の構築を目指すものとして彼らと大いに共感する。

◎9月9日 YouTube から『こちらの動画は過去数週間に人気の高かった動画に基いて自動的に選択されています』という「おすすめ」メールがあった。その12点の中にオルタの動画『永続敗戦論の展望』(白井聰;聞き手藤生健)(14289回視聴)が入って「オルタ」はメディアとして何をなすべきかを考えさせた。

◎【日誌】8月26日:参議院会館・「海は誰のものか—辺野古埋め立ての問題点」・櫻井国俊沖縄大学名誉教授。28日:自宅・プログレス研究会・納涼会。19日:吉祥寺第一ホテル・松下圭一先生を送る会。30日:国会周辺・「安保法案反対デモ」・戦争させない・九条壊すな!総がかり行動実行委員会。

9月2日:衆議院第一会館・「今こそ人種差別撤廃基本法を!」・金明秀関西大教授他。4日:ちよだプラットフォーム・荒木重雄。8日:参院会館・「安保関連法制を問う」・柳沢協二・山口二郎・酒井啓子。11日:ソシアルアジア研究会・田村光博。12日:東洋学園大・「アジア共同体学会・研究総会・懇親会。19日:ちよだプラットフォーム・「第二回オルタ懇話会」・三上治・鈴木真奈美・懇親会。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎『東アジアの平和構築に向けて』    鳩山友紀夫


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