【編集後記】

加藤 宣幸

◎6月5日『民主党のアイデンテイテイとは何か—その役割と責任—』というシンポジュームが(社)生活研究所総会記念として参議院会館であった。安倍首相による「解釈改憲」強行の暴挙に対峙すべき肝心の野党陣営は第一党民主党の腰が定まらず、次の総選挙で存在が問われると浮き足立つ維新がまず分裂し、つれて「野党再編」の掛け声に民主党の一部が蠢き、間接的に安倍首相を支える始末だ。こんな時に政党としてのアイデンティティを問われるのは、戦後70年積み上げられた不戦の歴史を一挙に塗り替えようとする安倍政権に真っ向から挑めない民主党の惨めさを映すものだ。

◎このシンポで政治学者の山口二郎法政大教授、中北浩爾一ツ橋大教授、宮本太郎中大教授等は、早く政権失敗の自虐から抜け、綱領的文書やマニフェストに戻って自民党の「保守本流派」と連携し安倍政権と対峙せよと口を揃えた。これに応えた大畠幹事長や議員の発言で印象的だったのは、保守本流と言われる宏池会会長は岸田外相で安倍べったりだがどこに「保守本流」がいるのか、という質問だった。なによりも党として自らの立ち位置を鮮明にするのが先決であろう。対決すべき安倍政権の何が問題なのか。元朝日新聞政治部長の羽原清雅氏に『安倍政権—その手法への不安と疑問—』として論じて戴いた。

◎6月7日北東アジア研究交流ネットワークの政策セミナーが『日中関係打開の道は』として大阪法経大セミナーハウスであった。講師は訪中約600回という白西紳一郎(日中協会理事長)、1963年以来中国を担当し貿易業界で著名な藤野文晤(元伊藤忠商事常務)両氏。白西氏が日中打開には日本が靖国や尖閣についての二つの紳士協定・四つの談話(宮沢・後藤田・河野・村山)・四つの政治文書(72年・78年・98年・08年の日中両政府声明・条約・宣言)を守ること、平和解決には (1)係争地 (2)主権棚上げ (3)友好協議 (4)共同開発 (5)共同管理が必要と強調。藤野氏は日中経済関係の重要性を指摘し、4月13日から19日まで自らも副団長として参加した国貿促第40回訪中代表団(河野洋平団長以下企業団員47名)と汪洋副総理との会談を報告した。

◎今、書店には嫌中・憎韓本が山と積まれ、WEBにはネトウヨ情報が溢れて、安直なナショナリズムが煽られ、お蔭で政権の支持率が高い。1930年代にも似た状況がつくられて国際的孤立が進み、最後は『外交感覚のない国家は必ず滅びる』との至言どおり日本は破滅した。朝鮮族の中国人で北陸大学教授李鋼哲氏に、国境を超えた『東アジア人』として『「歴史認識」と「洗脳教育」を如何に超克できるのか?』を赤裸々な個人的体験をもとに書いて戴いた。市民メディアとしてのメールマガジン「オルタ」は日中両国関係が緊張する今こそ市民レベルの重層的交流を拡げ、相互理解を深めたいという立場から、もっとも相応しい担い手として、在日中国人学者の李やんやん駒沢大教授、華人教授会前会長の朱建栄東洋学園大学教授、そして李鋼哲北陸大学教授などに寄稿を願った。この企画はこれからも続けたい。

◎人口減少社会が現実になり外国人労働者問題が身近になったが安易な労働力としてだけで扱ってはならない。すべて人間は人間として皆同じ人格なのだ。多民族・多文化・共生社会を築くチャンスとして、相互尊重の制度下で外国人を労働者として受け入れるべきだと主張する個人加入労働組合・全統一労組副委員長『移住労働者と連帯する全国ネットワーク』事務局長の鳥井一平氏に『外国人労働者をいかに受け入れるか』として問題点を明らかにして頂いた。

◎【日誌】5月21日:社会生産性本部労働研究センター研究会・懇親会。22日:永田町・江田三郎しのぶ会。26日:私学会館・自宅・武田尚子来日懇談。27日:妙見寺・仏教に親しむ会。夜・赤坂・久保孝雄出版祝う会。28日:ANAホテル・近藤昭一朝食会。31日:教育会館・ソシアルアジア研究会・総会・懇親会。自宅・二次会。

6月3日:自宅・運動史研究・浜谷惇。4日:「花と遊ぶ」絵画展・荒木美智子。5日:生活研シンポ・『民主党のアイデンテイテイーとは何か』。6日:編集企画懇談・荒木重雄。7日:北東アジア研究交流ネットワークセミナー・懇親会。10日:観世能楽観賞・竹中一雄。12日:自宅・東アジア問題懇談・仲井斌・浜谷惇。18日:衆議院議員会館・ 猿田ND事務局長訪米報告会・『米国に声を伝える−名護市長訪米活動のコーディネート経験を踏まえて−』。19日:妙見寺・仏教に親しむ会。

                           (加藤宣幸 記)


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