【編集後記】

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◎安倍政権は7月の参議院選挙までは「低姿勢」の構えで行くと言いながら、世
界同時株高・円安による国民の景気回復期待感で内閣の出足のよさにつられたの
か、衣の下から鎧がのぞくどころか本音を丸出しにし始めている。選挙では巧妙
に争点からずらして成功したが、原発再稼働、TPP参加、集団自衛権の容認は
予想されたところだが、最近は憲法36条改正からさらに一歩踏み込んで9条改正
による国連軍参加の集団安保まで言い出し、これには連立を組む公明党もさすが
に一応懸念を表明している。

私たちも憲法論議そのものをすべて頭から拒否するものではないが、自主憲法の
制定を声高に叫びながら逆に対米従属を深める政権の改憲論議に賛成はできない。

最近、この政権の本質を示すものとして元外務省国際情報局長孫崎亨氏が『世界』
4月号で『訪米した安倍首相が2月22日、米国のシンクタンク(CSIS)で[日
本は戻ってきた]と題する講演をしたが、冒頭からジャパンハンドラーズのアー
ミテージ氏(元国務副長官)、マイケル・グリーン氏(ジョージタウン大学准教
授)、ジョセフ・ナイ氏(ハーバード大学名誉教授)の名前を上げて謝意を表し、
アーミテージ氏に報告するという形で演説を始めている。これは一国の首相が公
的な場所ですべきことではない。これではまるで“ご主人様”にお礼をいう姿だ
った。』と紹介している。

6年ほど前、国民的な人気を誇った小泉首相は、ブッシュ大統領の前でプレスリ
ーを踊ってひんしゅくを買った。日本の歴代首相には、矜持もないのか。これが
日本外交を映すものとすればまったく情けない。TPPに参加し、ひたすらアメ
リカに随順するだけが日本の進む途なのか。政治評論家の三上治氏に『現実と政
治・社会の未来』として提言して頂いた。

◎英国の戦略家チャーチルは『エネルギー問題は「分散」である』といったそう
である。3・11で原子力安全神話は崩壊し、燃料資源のほぼ全量を輸入に頼り、特
に原油の80~90%を中東に依存する日本にとって、再生エネルギーをふくむ供給
源の多角化は焦眉の急である。シェールガスも期待されるが、足元ではロシアか
らの原油・天然ガスの輸入が注目される。2006年日本の輸入量約1%が、2013年
には10%と予想される。その分、中東依存は下がる。

日本のマスコミはロシアに元栓を握られて安保は大丈夫かとすぐ騒ぐが、石油天
然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)主席研究員本村真澄氏は『ロシアの
パイプライン戦略と日本』という講演で『過去40年の研究成果としてロシアほど
安定した供給元はない。元栓を閉めるのは自分の首を絞めるのだ。日本のマスコ
ミはプロレス報道並みだ』だと酷評する。

◎3・11の原発事故で、日本の電力を巡る多くのからくりが明らかになったが、そ
の一つに日本は燃料の大消費国なのに、世界水準から見て非常に割高な価格で輸
入している事実がある。LNGは欧米の最高3倍で、年2兆~3兆円も余計に支払
っている。これはすべての経費が原価に算入される「総轄原価方式」という巧妙
な仕組みにある。いくら高く買おうが独占を保障され安泰なのだ。ヨーロッパで
は電力網はもとより石油・ガスのパイプラインが縦横にはりめぐらされて価格交
渉力もつよい。日本はパイプラインどころか、電力の東西融通さえままならない。

最近、サハリンから北海道に上陸し日本列島を縦断するパイプライン敷設や、ロ
シアからの電力輸入構想が伝えられる。是非推進したい。それとともに日韓でき
れば中国をも加えて共同で資源国と価格交渉が出来る仕組をつくるという提言に
も耳を傾けたい。これらについて北海道大学名誉教授でNPO極東研を主宰され
る望月喜市氏に『エネルギー協力の進展と日ロ平和条約』として論じて戴いた。

◎毎号実証的で説得力のある論考を頂く濱田幸生氏からPM2.5の大気汚染深刻
化で注目される中国の「公害」についてとTPPについての【運動資料】を、生
活クラブ神奈川顧問の横田克己氏から【投稿】をいただいた。【追悼】は『日本
社会党河上派の軌跡』という政党史に残る浩瀚な名著を執筆された高橋勉氏から
『河上民雄さんと私』として、民雄氏が厳父河上丈太郎社会党委員長の秘書をし
ながら左右社会党の統一綱領作成に奮闘されたころを偲ばれた。

◎【日誌】2月21日ILO海外社会労働事情研究会で中嶋滋氏のミャンマー労働
社会事情。22日法政大学大原社会問題研究所で加藤勘十資料整理。23日西麻布の
K(黒川)塾で黒川雅之氏の中国デザイン事情。27日三宅坂・社会文化会館で
「お別れの会」。3月1日ハイム本社。2日小田原城・二宮尊徳資料館。5日矢野凱
也君見舞い。6日立正大学学術情報センターで『ロシアのエネルギー資源とどう
向き合うか』パネルデスカッション。8日ソシアル・アジア研究会で麻生雍一郎
氏の『最近のオーストラリア事情』。荒木重雄氏と懇談。9日明治公園で脱原発
集会と行進。10日から14日まで10年ぶりに風邪のため予定取消し。15日北千住で
竜岡会千寿老人施設開所式。16日神保町で「河上民雄氏を偲ぶ会」打ち合わせ会。

◎【サイトのリニューアルご案内】
お陰様でメールマガジン「オルタ」はこの3月で創刊9年を迎えますが、これを機
会にサイトをリニユアールしましたのでご案内します。
新しいURLは www.alter-magazine.jp/index.php に変更になりました。

これによりメニューの
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                           (加藤 宣幸 記)
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