◇皆川 昭一

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 工藤さんの労作、今次選挙についてあれほど的確に指摘した論者はいなかったと思います。単に選挙の批評のみならず、1930年代に始まった社会の液状化現象がファッシズム(及びスターリニズム)の支配の基盤となりうることが、歴史を振り返ることにより、改めて思い起こさせられ、その警鐘を鳴らしている点で出色の論文だったと思います。

 ある意味で民主主義の基盤だった派閥(議会制民主主義の日本的形態)が解体し、小泉チルドレンという「正義の観念のない多数派」が自民党に形成され、郵政民営化を怒号するだけの知的に三流人物に舵が握られたことにより、当分日本は漂流せざるをえません。

 メルトダウンを始めている世界と日本社会にあって、やや長期的に展望し、日本における民主主義とは何か、個人の尊厳とは何か、を改めて検証し、われわれ自身が液状化してしまい、工藤さんの言うところの「大衆人」に落ち込まないよう、気を引き締めなければならない時期に来ていると思います。大衆化即ファシズム化とは必ずしも言えないとは思いますが、新しい時代に突入したように錯覚する現在、民主党を含めて、改革ごっこの「バスに乗り遅れるな」という状況は、危惧が現実化する可能性は秘めていると感じます。反小泉の連合戦線が喫緊の必要があると考えますが、それを領導するのが(左翼とはおよそ関係のないはずの住民運動の大ボス、小ボスなどの例にみられるように)スターリニスト的な発想でしか運動ができないのではないか、それしか見えてこないというのが悲劇です。

 編集部は、工藤さんと川上民雄さんとの対談を企画してくれませんか。

                                       (筆者は元横浜市会議員)