■ 海外論潮短評【番外編】 

-世界ソーシャル・フォーラムより-   初岡 昌一郎        ───────────────────────────────────

近着のロンドン『エコノミスト』2月7日号から、オバマ大統領が就任最初に署名
した法律が、同一労働における賃金平等と労働組合組織化を促進するという記事
と、ブラジルでの世界ソーシャル・フォーラムについての報道を掻い摘み紹介す
る。


◇中道派が政権を制するか ― オバマ政権の出足


オバマ大統領の組閣が中道派中心の顔ぶれとなったので、彼の従来の主張が修正
されるとの見方も広がった。左派や労働組合がこれに危機感を抱いて働きかけを
強めているという。オバマが就任後最初に署名した法律を見る限り、彼の本来の
面目が発揮されている。

1月29日にオバマが就任後最初に署名した法律は、公正賃金回復法である。これ
は、性別、人種あるいは宗教に基づく賃金差別にたいし労働者が使用者を訴える
のを容易にする。アメリカ商工会議所はこれを非常に憂慮している。

翌日には、連邦政府と契約する企業が労働組合活動を阻害しないようにさせる大
統領令に組合代表の面前で署名した。

このほか、公的資金の注入を受けている銀行業界が経営者に多額のボーナスを出
し続けていることを"恥ずべき無責任"と厳しく批判し、オバマはウオール街とは
っきり距離を置くことを示した。


◇親愛なる資本家諸君、間違いを認めよ ― 世界ソーシャル・フォーラム


今年の世界ソーシャル・フォーラムはこれまでとは違い、経済人によるダボス会
議よりも団結を示した。ダボス会議が経済混乱の責任探しに多忙だったのに比べ
、同時にブラジルのべレンで開催された社会フォーラムは、競争を促進してきた
世界経済の設計者たちが犯人であることを明確に指摘した。

出席を信認された5、000以上の団体のうち、4,193がラテンアメリカからであっ
た。今年のフォーラムにブラジルの左派政権は、約5,200万ドルの助成金を出し
た。この会議には、パラグアイ、エクアドル、ベネズエラ、ボリビア、ブラジル
の5カ国大統領が出席した。

このフォーラムの提案には、次のようなものがある。アメリカが貿易黒字と財政
赤字の拡大を阻止すること、為替交換率と資本の国際移動の管理を再確立するこ
と、格付け機関を改革すること、ヘッジファンドと私募債証券企業、デリバティ
ブと構成内容不明のフアンドその他の法に抵触しかねない金融機関を禁止するこ
となどである。最後に、世界経済を再建するために"ニューディール"が提唱され
た。
           (筆者はソーシアルアジア研究会代表)

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