【沖縄の地鳴り】

沖縄自治体選挙の現場から

平良 知二


 この1ヵ月、地域の選挙に没頭している。
 ある候補者の後援会長になってしまったので、連日選挙事務所に詰めて陣頭に立ち、外に出て各家庭へのビラ入れ、戸別訪問、街頭での手振り活動をやってきた。11日が投票日。1ヵ月間、私事などほかの“業務”が一切ストップしたままであり、選挙から解放されるのを待っている。

 選挙は那覇近郊の、人口3万4,000人の自治体の町長選挙と議員の補欠選挙。同時実施である。沖縄県内では、中規模の自治体といってよく、那覇のベッドタウンであり、工業団地でもある。小生が後援会長になっているのは議員の補欠選挙。欠員の1議席を3人で争っている。1人の候補者が早々と出馬表明して運動を先行、わが陣営は追いかける立場にある。
 苦しい状況が続いていたが、現職町長と連携しての選挙戦を展開中で、その点では優位な環境をつくりつつある。町長選の応援で街頭演説をした翁長知事が、われわれの候補者に対する支持も表明してくれて、ムードは悪くない。

 通常の議員選挙なら、定数(約20議席)に入ればいいので、出身集落の票を固める選挙となる。大きな集落であれば、それだけで闘いは有利だ。しかし、今回は“町全域が闘いの場”であり、なにをどうしていいのか、試行錯誤の連続であった。やっといい展開になってきた、と感じた今は、もう投票日直前である。勝敗については、一緒に運動してきた誰も口を開かない。戦況不明である。

 それでも、町長選の行方や、投票率はどうなるか、当選ラインはどのくらいか、など疲れ直しの休憩タイムに話題になる。アパートの多い地域が増え、候補者のひとりが熱心に若い世代へ呼びかけていることもあり、若者の動向は気になる。メールで支持を広げている、などのうわさも飛ぶ。わが陣営も、18、19歳の層を狙って選管公認のはがきを発送した。

 投票率について気になることがある。親元を離れた若者たちが、投票できない(投票しない)事態があらわになってきているのではないか、ということだ。先の参院選挙、沖縄では石垣市と宮古島市が投票率50%を割り込んだ。50%を割る事態はたぶん、県内全市町村を通じて戦後ほとんどなかったことであろう。
 しかも、これまで市部としては高い投票率を維持してきた宮古、石垣である。新聞などメディアはあまり注意を払っていなかったが、これは由々しき事態に感じられる。

 原因ははっきりしないが、ひとつの要因に、住所を地元に置いたまま、県外、島外に働きに、あるいは学びに出ている若者が以前よりも増え、選挙権を行使しない人がかなりいるのでは、と推測される。選挙の入場券は本人の住所(つまり親元)に送られる。親が選管を通じて手続きし、本人に入場券を送らねば投票できない。送られると、本人がいま住んでいる自治体を通じて投票可能であるが、親は手続きを面倒がり、そのまま放っておくことが多いと思われる。

 参院選挙の石垣市、宮古島市の低投票率は、このような例が多かったからではないだろうか。20代、30代など若い世代の、住所を移さない島外移動が目立っているのではないか。かつては高投票率を誇った離島の投票率が次第に落ちてきているのは「若者は政治に関心が薄い」というより、この現象のせいだと思う。典型的な離島のひとつ、粟国村は52.8%と50%割れに近かった。以前なら考えられない。
 今回の地域選挙の結果がどうなるか、期待と関心をもって見守っている。

(追記)投開票の結果、町長選、町議補選とも勝利した。
    ただ、投票率は町長選50.03%、補選は50.00%で、かろうじて50%割れを免れた。

 (元沖縄タイムス編集局長)


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧