【横丁茶話】

幼稚な疑問

                            西村 徹


 私はただいま肺がん療養中である。水準の高いことを書ける状態ではない。それを考慮に入れた上で病人の愚問に識者の誰かお答えいただきたい。

●WIZDOM より

 12月15日安倍政権圧勝を受けてNHKでは午後10時 WISDOM と言う番組でアベノミクスを論じた。第1部冒頭シンガポールのジム・ロジャースは「日本株を買うがアベノミクスは日本を壊したと言われるだろう」と言った。ビル・エモットもこれに同感、両者とも名目賃金に実質賃金が伴わないことに憂慮を示した。

 第2部においては端的に「鰐ノ口」が取り上げられた。主として税収と歳出の差が開く一方になって歯止めが利かないことを指す言葉である。ところがジム・ロジャースは名目賃金と実質賃金格差にも「鰐ノ口」の語を適用、「破たんするであろう。利払いできなくなる。安倍のいうことをまったく信用していない。社会保障費は課税によってでなく移民増によって対処すべし」とした。

 世界経済に触れて「なぜ英国が好調か」に、ビル・エモットは「エネルギー価格の下落」を要因として挙げた。第1部において既にアダム・ボーゼンもそれに触れた。私が問いたいのは、まさにこの点である。

●寺島実朗のアメリカ経済復活論と幸田真音の逆オイルショック論

 私の貧しい情報源にNHKラジオあさいち http://www.nhk.or.jp/r-asa/business.html がある。この中のビジネス展望12月12日放送分は寺島の楽観論が過去何度もの発言の繰り返しとして強調される。ビル・エモット、アダム・ボーゼンと軌を一にするものである。

 ところが幸田の12月2日放送分、「逆オイルショックの到来か?」は様相を一変する。原油価格は6月の高値107ドルから16日58.24ドル。北海ブレントも62.59ドル。1バレル70ドルがシェールオイルの採算価格である。サウジの採算価格は90ドル。世界経済の成長率が3%に達しないとオイル需要は伸びない。

 産油国にはヴェネズエラのように原油収入95%という国もあってデフォールトが囁かれる。産油国どうしの足の引っ張り合いで、もう無茶苦茶。日本は年15兆円の原油輸入国。今買えば軽く5兆円のトクになる。これ以上の円安で相殺されぬうちに手を打っておくべきでないか。安倍の得点になるならないなど問題でないと思うがいかに。(2014,12,16)               
(筆者は堺市在住・大阪女子大学名誉教授)