北の便り(3回)

■国依存から地方の自立へ―私の選挙総括―

                          南忠男

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新しい風~ドサンコロジー国依存から地方の自立へ
~私の選挙総括~

今回の総選挙、小泉旋風で自民党が圧勝し、民主党が惨敗したとマスコミは報じているが、北海道に関する限りは逆の風が吹きはじめた。私はこれを「新しい風~ドサンコロジー」と呼びたい。

選挙結果は自民党が一減で七議席、民主党は現状維持の十一議席ながら首座の位置を守り抜くことができた(数字は小選挙区と比例区の合計)。民主党が小選挙区で取りこぼしたのは、はじめから自民党の指定席と云われていた武部自民党幹事長と、町村外務大臣、中川経済産業大臣の鎮座する三選挙区のみだ。第3区は惜敗したが比例区で復活した。

小泉自民党のナンバー2の幹事長、2主要閣僚を擁しながらも北海道民は小泉旋風をはねかえした。地方の切捨てに敢然と立ち向かう「道産子(ドサンコ)魂」「開拓者精神」をいかんなく発揮した。仔細に検討すれば、横路孝弘氏の辛勝に見られるようにミニ東京~大都市札幌と地方都市・郡部では温度差があった。

もう一つ、比例区でローカル政党「新党大地」が公明党を上廻る得票で一議席を獲得したことは注目される。この党はあっせん収賄罪などで刑事裁判中の鈴木宗男氏が自分の選挙出馬のため急きょ立ち上げた党であり、鈴木氏の利益誘導型政治手法はまさに自民党政治の典型であるが、「新党大地」に投票した道民と鈴木宗男をイコールで結ぶべきでないし、ムネオパフオーマンスに踊らされたとも私は思わない。

小泉政治にたいするやりばのない怒りの一票と理解したい。

「郵政民営化は改革の本丸」という小泉マジックに北海道民は惑わされなかった。「小泉改革は地方の切捨て」であり「地域から郵便局が消える」危機を肌で感じていた。

国鉄の民営化で赤字路線は容赦なく切り捨てられ、第三セクターが肩代わりして頑張ってきた「ふるさと銀河線」(旧「池北線」で、十勝ワインで有名な池田町と北見市を結ぶ路線)もいよいよ今年度限りで廃止されることになり、沿線住民の痛みははかりしれないものがある。

私の生家は旭川市(昭和の大合併前の東旭川村)の旭正という農家集落である。旭川市の中心部から20分程度の距離で、しかも市中心部から旭岳(大雪山国立公園の主峰)の麓への通過点に位置し、比較的有利な地理的条件にありながら、相次ぐ離農で過疎化し、地域から商店も農協もなくなり、複式学級の小学校と郵便局だけが残っている。

36万都市の旭川にしてこのような状況であるから、純農村地帯ですすむ過疎化の実態はさらに深刻である。

今回の選挙で自民党が振るわなかったことについて、高橋北海道知事は「郵政民営化について道民の中に<漫然>とした不安があった」とコメントしているが、<漫然>とは何事か。道民の多くは<毅然>としてノーと意思表示したのである。高橋知事は元通産官僚から自民党に担がれて天下りした知事で、自らを「単身赴任」と自負して多くの道民のひんしゅくを買っている。

自治・分権でたたかっている県知事の多くは、「郵便ネットワークは日本の誇るべきインフラであるから維持されるべきだ」と主張している。高橋知事の先の発言からして、彼女はあきらかに自治・分権に背をむけていると断罪されなければならない。

「三位一体改革」も結果は地方交付税交付金の大幅な削減だけが先行し、道を含めすべての自治体が明年度の予算編成に戸惑っている。幸い、今総選挙で民主党が比例区から、全国に先駆けて「まちづくり基本条例」を制定した、自治・分権のたたかいの旗手である元ニセコ町長の逢坂誠二氏を担ぎ出し当選させたことは北海道の自立と自治・分権のたたかいにいっそうのはずみがついた。

(筆者は元旭川大学講師)