■ 俳句                          富田 昌宏

───────────────────────────────────
  春愁や書棚に古りし「罪と罰」

  春愁や駅弁の紐ゆるり解く

  春愁や睫毛を持たぬ埴輪の目 

  残雪やここにも隠れ切支丹

  三椏(みつまた)花に浮かれる陶河童

  徴兵の無き世称えよ建国日

  桃咲くや水引き込んで荒鋤田

  蛇穴を出て積読(つんどく)をなじりけり

  六法全書開けば古き種子袋

  風光る海の匂いのエアメール

                                                    目次へ