◇『敗戦のあとさき』証言の行くえ 今井正敏

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「オルタ」18号は歴史に向き合い、かつ語り継ぐ義務として『敗戦のあとさき』特集を組み、5名の方が、8.15当日の体験、そのごの歩みなどについて貴重な証言を寄せられています。いずれも真実感に溢れ、充実した内容で読み応えがあり勉強になりました。

その勉強の中で、私の脳裏に強く刻まれたのは、この「8月15日」を語り継ぐ人々は確実に年々少なくなるのだということです。

「年移り、人変わる」は世の常ですから貴重な証言者が減っていくのは当然ですが、たとえば、今回お書きになっておられる河上民雄先生は最後の徴兵検査(昭和19年が徴兵検査の最後)を受け、敗戦の年には20歳で私も同年ですから今年80歳になります。

したがって、この年代の人が10年後の「8月15日」70周年を迎える時には90歳になり、徴兵検査を受けて兵隊になった人の証言の可能性は非常に少なくなると思います。

つまり、「敗戦70周年」の時「8月15日」を証言するのは今年80歳の人より若い人が主体になるので証言内容も大きく違ってくると思われるのです。

「文芸春秋」9月号が「運命の8月15日」56人の証言を特集していますが、56名中、昭和20年に20歳以下だった人が、23名(うち10歳以下が4名)でした。

「戦争体験の風化」が言われ、今は「戦後」でなく「戦前」ではないかとさえ、ささやかれるこの頃ですが、「オルタ」18号に寄せられた貴重な証言を読み、「歴史を語り継ぐ義務」が体験者の減少によって、今後どうなっていくのか、いささか気になりました。