■【オルタのこだま】

米国下院議長の広島訪問              今井 正敏

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 9月6日付け朝日新聞に「広島への関心をそいだ辞任劇」という投書が載った。
  「福田首相の辞任表明でマスコミは大騒ぎしているが、翌2日がどんな日であ
ったか思い返して欲しい」という書き出しで2日はG8の立法府議長が被爆地・
広島に集い『平和と軍縮』をテーマにG8議長サミットが開かれた日であり、こ
れはホストの河野洋平衆院議長の並々ならぬ見識によって開かれたものであるこ
と。G8のうち4カ国が核兵器保有国であり、世界の関心を広島に向けさせる好
機であったのに福田首相はこれが頭になかったのかといぶかり、福田首相の罪は
重い」と断じている。
 
  この広島サミットには米国のナンシー・ペロシ議長も参加しており、原爆投下
後、広島を訪れた最高位の米国政治家とのことで9月4日付け朝日新聞社説でも「
米下院議長広島への意味深い一歩」とペロシ議長の広島来訪を取り上げた。社説
は「議長会議参加の一行が慰霊碑への献花を終えて戻ろうとしたとき、ナンシー
・ペロシ議長はもう一度慰霊碑に向かい、胸の前で小さく十字を切った。その胸
に去来したのは何だったのだろう。一瞬の閃光に命を奪われた14万人への鎮魂へ
の念だったのか。原爆を投下した自国にどんな思いを抱いたのだろうか。」と書
いている。さらに「広島・長崎への原爆投下をどう評価するかについては日米間
に深い亀裂がある。大きなわだかまりのあるなかで議長サミットを広島に誘致し
た河野議長の思いは『どの国が悪いという責任論でなく、人類が同じ人類に対し
て非人道的な兵器を使用した事実』を直視しようということだった。

 ペロシ氏は『広島訪問を通じて戦争の持つ破壊力をありありと思い起こし、す
べての国が平和を促進して、よりよい世界をつくることが緊急の課題だとおもい
ました』との短い声明を出した。彼女なりに河野議長の問題提起に応えようとし
たのだろう。下院を代表する議長としての訪問だから、米世論の批判を浴びるか
もしれない。断行した勇気と見識に敬意を表する。」と結んでいる。
  米国の正副大統領に次ぐ下院議長が広島を訪れたということは、日本の原水爆
禁止運動にとっても大きな出来事であった。私が関係した日本青年団協議会(日
青協)は1954年の第4回大会で「原水爆兵器の製造・実験使用禁止に関する要望
書」を国連および関係各国に送ることを満場一致で可決し、以後組織を挙げて熱
心に運動に取り組んだ。
  私はこの運動を直接体験し、組織を離れてからも見守り続けてきた者の一人と
してナンシー・ペロシ議長の広島訪問を「声」欄投稿者や朝日社説と同じように
高く評価したい。

            (筆者は元日青協本部役員)

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