【オルタの視点】

ロヒンギャ問題…心痛めるイスラム教徒の友人たち

坪野 和子


 ミャンマーから非仏教徒(主にイスラム教徒・少数のヒンドゥ教徒)のロヒンギャ[註1]と呼ばれる人々が軍や仏教徒による暴力・虐待・殺戮から逃れるため、大勢の人々(約80万人10月10日現在)が隣国バングラデシュなど国外へ苦難の亡命をしています。彼らは500年前からのチッタゴン(現バングラデシュ)からの移住者の子孫で、ミャンマーは当時英領インド帝国のビルマ州だったので同じ国でした。イスラム教徒たちは他のイスラム教徒の国・地域との交易の仕事でアラカン(ラカイン)地方の経済に役立っていました。ところが第二次世界大戦で英国と日本がそれぞれ先住のアラカン人とロヒンギャをわざと民族対立させ利用し、今日に至っています。今回は迫害を越え民族浄化の殺戮が行われています。

 今回の大勢の流出は8月25日からはじまりました。この日、スー・チー氏は「テロリストを支援しないでほしい」と英語で世界メディアにアナウンス。

 それから数日後、ほぼ毎日、各国のムスリム男子の友達の誰かからフェイスブックのメッセンジャー[註2]で画像や動画を私に送信してくれるのです。それらの虐待動画はイスラム圏では2015年くらいから流れていたようです。またライブ配信[註3]という方法を取って瞬間に消えるプロテスト。それらはネット上では削除されて見ることができなくなっているものばかりでした。辛い動画や画像を泣かずに、目を閉じずに頑張って観ました。これらを見て行動できる精神的に強い女と判断して送信してくれた愛すべきムスリム男子。今回、この原稿を書く機会をいただいたことに感謝いたします。

 先日、この原稿のために、在日バングラデシュ人協会の元幹事ナズムル・ブイヤンさんから情報提供していただきました。彼もまた私に動画を送信してくださっている一人です。在日バングラデシュ人の視点で、沈黙する日本政府への不満と日本人に知ってもらいたいポイントを語ってくれました。彼は駐日ミャンマー大使館にも行って、この虐殺をやめてほしいと訴えたそうです。

◆「人が人を殺すなんておかしい」
 彼は、この言葉を何度も言いました。仏教って動物を食べない人がいる(ヴェジタリアン)、仏教もイスラムも人を殺さない。「ミャンマーのロヒンギャ襲撃、彼ら仏教徒じゃない、信じられない」と言いたい私をすごく理解していただきました。ムスリムの人たちがISISやアルカイダ、タリバンに対して「彼らムスリムじゃねぇ」と言うのと同じくらい…

◆「何が起きているか、きちんと伝わっていない」アカウント凍結[註4]
 彼がネットを通じて様々な友達に発信している理由は常にシリアスです。今回のロヒンギャ問題に関して、あまりに残忍な悲惨なコンテンツを発信していたため、アカウントを凍結されてしまいました。そのくらいアクティブに送信していましたから。

◆「事実を直視してほしい」
 ナズムルさんだけでなく、ムスリム男子が送ってくださった画像・動画は、あまりに残忍な虐待・殺戮の様子やその遺体、小さな子どもへの虐待殺戮、そしてバングラデシュへ無事たどり着いても過酷な状況、妊婦や乳飲み子をかかえる母たちの姿、籠に運ばれてたどり着いたのに命尽きた老人、食べ物がなくて人間の内臓を食べて命をつなぐ様子などです。…とても正視できない!! 私、頑張りました!!

◆+「なぜバングラデシュは彼らを受け入れるか」
 私の最後の質問「バングラデシュは、自国のジョブレスがいっぱいいるのに、こんなにたくさんの人たちを受け入れるのはなぜなの?」
 「ああ…外国からお金や物資が来るからね。ハシナ首相周辺が儲かるんだよ。だからなるべく多くの人々を受け入れたい。この政権は長すぎる。ずっと選挙がない」ああ、わかった!! 彼が語っていないミャンマーの軍事政権事情も、沈黙する国々の事情も、為政者のホンネで動いたり、沈黙したりしていて、メディアもそれに従っているってことが。
 ロヒンギャ支援は、トルコが最初、パキスタン、エジプト、マレーシア。でも私自身が感動したのは、バングラデシュの人が組織でなく、自発的に家族で食糧を分けてあげている姿でした。彼への話しはここまでです。

◆その後…他の友達と…「彼らはテロリスト」という上座部仏教徒とヒンドゥ
 私は友達をたくさん失いました。現実を直視したくないらしいです。
[私の思い]この民族浄化をなぜ日本が沈黙するの?
(歴史を隠したい)為政者たち・軍事関係者の都合・トップシークレット
 江戸期からの反英国の日本が、第二次世界大戦によって作った民族対立。日本が台湾統治で少数民族に行ったことをビルマでも行いました。今行われている民族浄化の責任の一端は日本と英国にあります。私たち日本人はロヒンギャをサポートする義務があるのではないでしょうか?(続く)

[註1]ロヒンギャ(ロヒンジャー):gya はジャと表記するほうがより近いのですが、ネット検索で引っかかることを願って日本で一般的なロヒンギャとしました。
[註2]フェイスブックのメッセンジャー:友達同士またはグループでチャット(文字で会話)・書類添付・録音・電話・ビデオ電話・画像・動画送信ができる機能を持ちます。
[註3]ライブ配信:動画サイトで実況中継を送信すること。配信終了後、配信者が消して見えなくすることも残すことも可能です。残しても暴力的コンテンツが含まれていればサイト運営側によって削除されてしまいます。
[註4]アカウント凍結:SNSなどで運営側判断によって使用していたIDを利用できなくなってしまうこと。

<資料>
 8月25日スー・チー氏発言から9月前半まで私がニュースで拾った記事・twitter で拾った記事をブログにまとめました。多言語によります。おすすめは「アルジャジーラ」とヴォイス・オブ・アメリカ美国之音(中国語)です。
  https://ameblo.jp/amalags/theme-10104147261.html

 (高校講師)

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