【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】

(8)サングルポットとカッドゥルパイの冒険(3)

吉川 佐知子

●帽子屋で

 二人のガムナッツは、やがて長い曲がりくねった道をとうりぬけると、暖かい陽射しにおおわれた、緑色のまくがぶら下がっているところへ出ました。とかげさんは、においをかいだり辺りを見回したりして、「なんだ帽子屋の中じゃないか」と言いました。
 葉っぱのカーテンを開けてのぞいてみると、なるほどたくさんのベイビ―たちが帽子を買っていました。
 サングルポットとカドルパイはうっとりとしてしまいました。

 「私たちを助けてくれた蛙さんたちに二つ買いましょうよ」とカドルパイ。
 「奥さんたちにあげられるでしょう?」「それはいい考えだ」とサングルポットも同意しました。そこで中へ入って一番大きな帽子を二つ買いました。

 二人は、自分たちを逃そうとして、目玉蛙さんが、気が付いてかれらを追ってきた邪悪な嘘つきの蛇夫人に呑まれてしまったことは知りませんでした。親切な蛙さんがぴょんぴょん跳ねながら蛇の注意を自分に引き付け、ガムナッツたちを逃がしてやり、犠牲になって飲み込まれてしまったことを。
 サングルポッドたちが、自分たちの帽子よりまず蛙さんのために帽子を、と思い出すのも、素敵なことでしたけれど。

●大きな町で

 この曲がりくねった道を通り抜けた時「なんと大きな町!」とサングルポット。
 「そうだね。私がこの帽子をもっていって戻ってくるまでその辺を見物していてくれるかい?」と、とかげさん。
 「ええどうぞ」二人は答えました「それは楽しいかも」。
 「そんなに長くはかからないからね」と、とかげさんは大急ぎで行ってしまいました。

 サングルポットとカドルパイはそのへんを見まわしました。こんなにたくさんの家々、人々、それに道。それはとても目まぐるしい。
 「あれ タクシーの駐車場があるよ」サングルポットが叫びました「あれに乗ってその辺をドライブしようよ」。
 そこで二人は 一番近いタクシーにかけよりました。それは小さな赤ちゃんを抱えた、親切そうなカンガルーです。
 カドルパイはサングルポットより小さいので、中へ入りました。
 サングルポットは背中にのりました。中は小さくて、ひとりしか乗れないのです。
 赤ちゃんは後ろにいたタクシーがお世話をしてくれると約束してくれました。子持ちのお母さんが、周りの人たちの助けを受けながら安心して働くことができるのです。

●ホワイトシティ

 タクシーは素晴らしい乗り心地でした。サングルポットはつかまっているのが大変でしたが、すっかり楽しみました。
 一休みしたときにカドルパイがドライバーに聞きました。
 「人間って見たことあります?」「もちろん」ドライバーはむちで指し示しながら「たくさんいますよ あっちに」。
 「そこへ連れてって」サングルポットが頼みます。ドライバーは頭を振りながら
 「だめですよ、危ないから」
 「どうしてなの?」
 「あんたたちは殺されるか、死ぬまで閉じ込められてしまうのよ」
 サングルポットは
 「でも、ぼくらは人間を見たいためにずっと来たんだから」
 「そうだ、とても遠くからね」とカドルパイ。
 「それなら先に楽しい思いをしてからがいいわね。ホワイトシティをみましたか?」
 「いいえ」
 「きっと好きになりますよ」

 メイ・ギブスは、詩のようにリズミカルな言葉で、可愛いガムナッツを見守り、子どもたちに語りかけていきます。

 (詩人)

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