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オルタ8号を読んで   今井 正敏

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オルタ8号の特集「日中二国間友好を充実し、東アジア地域諸国間協力を 発展させよう」は最近の日中関係が、かっての「熱烈友好」の時代から大き く様変わりして「政冷経熱」の時代に入り、中国側の反日感情の高まり、日 本側の対中嫌悪感の増大がとかく問題になっている時だけにタイムリーな特 集企画でした。  

日中友好関係の歴史を最もよく知っている一人、劉特有さんが講演で、改 革開放前の中国と開放後について数字で比較し、この20数年間の大きな変化 を指摘しています。  

 これを読んで1956年(昭和31年)の秋に政党や労働組合でない民間団体と しては初めて日本青年団協議会(日青協)が訪中(私は副団長として参加) し、周恩来総理に御目に掛った時のことを思い起こしました。

 

 周総理は『中国は新中国発足後、大きく変化、発展を遂げるようになった が、その変化・発展の姿を現在の先進諸国と横並びの数字で比較するのでな く、あくまでも革命前と革命後を比べるということで縦並びの数字を使って 見つめるようにしている』と強調されておられましたが、劉さんの発言もま さに、縦並びの数字を示していたので周総理の言葉は今の中国でも生きてい るのかなと強く感じた次第です。

 しかし、現在の中国の躍進ぶりを見ていると多くの部門での生産額が世界 のトップに並んできており、「縦の比較」が「横の比較」に変わるのも近い のではないかと思います。

 劉さんは中国の軍事的脅威論と経済的脅威論について、「平和を追求する 理念」と「中国経済の発展が日本経済の発展になる」というウイン・ウイン の関係論で明快に説明していますが、やたらに「中国脅威論」を振りまいて いる人たちに読んで貰いたいと思う。  

 「政冷・経熱」の「冷」は小泉首相の靖国参拝が原因であることを否定す る者はないが劉さんはこれについて「侵略戦争によって多くの中国人民がう けた塗炭の苦しみを日本の為政者はどう考えておられるのか」「平たく言え ば中国の心を知っていただきたい。その心を知らなければ本当の日中友好を 築くことは出来ないと考えます」と心情を率直に訴えておられます。

 小泉首相は口先で日中友好を唱え、やることは正反対です。国民の一人と してまことにやるせない。

 問題の焦点は「A級戦犯」の靖国合祀なのですが、残念ながら、日本人の 多くが「A級戦犯とはなんであったのか」という認識がはなはだ薄い。これ が「なぜ、いつまでも中国は靖国反対にこだわるのか」という声になるのだ と思います。

 

 私達は日青協訪中の時に郭先生から日本留学時代の思い出などを伺いまし たが、劉さんから郭沫若先生が岩波茂雄さんの墓参をされた話を聞き、あら ためて先生の心優しい人柄を偲んでいます。

 村岡久平理事長とのインタービユーでは理事長の心情やエピソートが話さ れていてよかったのですが、私にとっては村岡理事長を日中友好協会の副会 長として支えてきた、また現に支えている静岡の鈴木重郎さん、福井の辻一 彦さん、大阪の高田明さんたちは私の親しい友人なので日中友好運動には特 別の感慨があります。