【沖縄の地鳴り】

やんばる国立公園計画へのパブリックコメント

沖縄・生物多様性市民ネット


<2010年10月に名古屋で行われるCOP10(第10回生物多様性条約締約国会議)に向けて、沖縄の生物多様性の理解や保全への取り組みを推進していこうと2009年7月に結成されたネットワーク。そんな沖縄BDが、今、こんなことやってまーすとお知らせしていくブログです。>

 去る3月27日は、環境省が中心となって進めているやんばるの森の国立公園化についてのパブリックコメント(意見書)の締め切り日でした。パブコメの対象となったのは「やんばる国立公園(仮称)指定書(環境省原案)」「やんばる国立公園(仮称)計画書(環境省原案)」。沖縄BDは、他の環境団体や市民団体のパブコメに賛同する形で、またBDメンバー個人でのパブコメの提出となりました。

 添付したパブコメでは、多くの問題点や懸念が示されていますが、それは次の4つに分けられることができます。

1)特別保護地区、第1種保護地域が、あまりにも狭過ぎる!これでやんばるの生物多様性豊かな環境が保護できるの? この狭さでいいとする根拠は?

2)北部訓練場や高江のオスプレイパッド建設について触れていない! 環境省また/まだ弱腰?

3)世界自然遺産への言及無し!「国立公園は世界遺産登録にむけての第一歩」って、あれだけ言っていたのに、なぜ言及しないの?

4)保護区域/地区の現状の説明が不十分!特に区域/地区が現在どのように利用されているのかが分からない! 概要の説明を読むと、なんかエコツアーだけに利用されているような印象を受ける。でも伐採とか、林道建設とはかはどうなっているの? この情報量でパブコメを書けというの?

 結論は「やり直しを!」です。

 なぜ「説明が不十分」なのか。以下の図を比較してみると分かると思います。
 まずは、環境省が今回出した「やんばる国立公園(仮称)の指定及び計画決定案の概要」にある国立公園のゾーニングを示した図。いくら概要版とはいえこの図ではあまりにも雑。

(図1)国立公園のゾーニングを示した図
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 次に環境省が今回出した「やんばる国立公園 区域及び公園計画図1」。保護区域/地区を線で示しています。非常に細かいのですが、pdfファイルでは拡大も可能です。でも伐採や北部訓練場についてはなにも見えてこない。

(図2)環境省の「やんばる国立公園 区域及び公園計画図」
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 次に沖縄タイムスが紙面で掲載した国立公園のゾーニングの図。多分、環境省の「概要版」の図を基に自ら作成し直したと思います。「公に伝える」というのが新聞の使命の一つなので、分かり易くなっています。「北部訓練場」という言葉もはいっています。

(図3)沖縄タイムスが紙面で掲載した国立公園のゾーニングの図
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 次に林野庁の「森林環境保全整備事業 概要図」です。国立公園予定地内の林業の様子、伐採や林道の建設、木の育成などが少しは見えてきます。この概要図が掲載された資料では、世界自然遺産登録については言及されていますが、北部訓練場への言及なしです。概要図でもただ白く示されているだけ。なんだかな〜という感じです。

(図4)林野庁の「森林環境保全整備事業 概要図」
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 そして沖縄県の「やんばる型林業推進」施策方針案(2013年3月)で示された林業のゾーニングの図です。そのなかで「自然環境保全区域中核部」(濃緑)は、「原生的自然林を維持・継承するエリア」と定義づけられていて、「中核部」は、国立公園の「特別保護地区」の部分とほぼ重なります。これは北部訓練場の半分が返還されたことを前提としてのゾーニングとなっているので、「特別保護地区」は790haなのですが「中核部」の面積は1.739haとなっています。国立公園予定地と北部訓練場との関係が見えてくる図です。

(図5)林業のゾーニングの図
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 最後に「やんばるあかひげ」さんのサイトをご覧下さい。環境省の国立公園「指定書案」や「公園計画書案」では見えてこない、やんばるの森の現状が分かります。

(図6)やんばるの森の現状
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 環境省による「やんばる国立公園」の取組みの今後の日程は、以下のように予定されています。
 平成28年4月 提出された意見を取りまとめた上、公表
 平成28年6月 中央環境審議会に指定及び決定案を諮問・答申
 平成28年7月 中央環境審議会の答申を踏まえ、指定及び決定内容を官報告示
 みんなで注視し、意見を述べていきましょう。


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