【オルタの視点】

なぜ立憲民主党に入るのか

有田 芳生


 私が参議院議員になって7年半が経過しました。このたび、民主党時代から数えると8年ほどお世話になった民進党を離党することにしました。若いころ、尊敬していたジャーナリストからこう教えられました。「ジャーナリストとはたった一人で世界に立ち向かうものだ」。これは国会議員にもいえることでしょう。党があって自分がいるのではない。世界に立ち向かう議員としての自分があって、党があるのです。ずっとそう思ってきました。

 民進党に所属したままでよいのだろうか。そう考え出したのは10月に突然行われた総選挙とその結果からでした。民進党はすべての衆議院議員が希望の党に入る方針を決めました。参議院議員も選挙後に希望の党に合流するともいわれていたのです。ところが枝野幸男さんをはじめ、リベラルといわれる人々が希望の党から排除され、それをきっかけに立憲民主党がつくられます。

 じつは枝野さんたちとは別の動きもありました。菅直人さんから新党を創り、枝野さんを代表にしたいから参議院から3人集めて欲しいという依頼が私にあったのです。「原発ゼロ新党」を創ろうというのです。しかし結果的には枝野さんたちが立憲民主党を立ち上げたので、菅さんもそれに参加することになります。私としては一端離党を決めているわけですから、これからどう行動すべきかを毎日考えていました。

 私たち国会議員はたいてい政党に所属しています。非常に人柄の良い国会議員でも、所属する労働組合の意向にそって、会議で意を決したように原発は必要だと発言しなければならないことがあります。これが特定の組織に従属している姿です。しかし私の場合は組織に依存しているわけではありません。個人としてどのような選択をするのが正しいのか。憲法、安保、原発などなど、一人の国会議員として世界や日本に向かって行動すべき精神とは何なのか。改めてそんな課題に直面しました。

 そうした問題意識のなかでさまざまな政治関係文献を読みました。一番驚いたのは丸山眞男さんが1960年代にリベラルについて語っていることでした。国家独占資本主義が深まれば深まるほど「ルールオブロー」=「法の支配」や立憲的手続きがないがしろにされてゆく、この時に一番必要なことは憲法を実現することだというのです。まさにこれだと確信し、先日開かれた参議院の憲法審査会で丸山さんの意見を引用して「今は憲法を変えることではなく、憲法を実現すること、いわば憲法実現闘争こそ必要なのだ」と発言しました。

 たとえば憲法25条には国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとあります。しかしいまの日本には格差拡大などが1960年代よりも深刻になっています。いまこそ憲法を実現することが大事なのです。また丸山さんは別なところで、日本には大日本帝国を支えたリベラル(伝統的自由主義)があるとも指摘しています。「大日本帝国リベラル」という言葉にも驚かされました。大政翼賛を支えるリベラルもあったのです。いまに置き換えれば危険な安倍政治をささえるリベラルもありうるのです。こんなことを考えていると、自分の思想や信念にもっとも近いのはどの政党だろうか。残念ながら自分が属している民進党ではない。そう判断したのでした。

 本来ならば特別国会が事実上終わる12月8日に離党届を出そうと思っておりました。しかし12月21日に私が野党筆頭理事をしている拉致問題特別委員会の閉会中審査があります。横田早紀江さんなど、被害者家族3人が参考人として発言します。そこで質問して委員会が終わった後で離党届を出す計画だったのです。ところが産経新聞に私が立憲民主党に移りそうだと書かれてしまいました。あまり思わせぶりな状況を引きずるべきではない。そう判断して11日に離党届を出しました。安倍政権だけでなくトランプ大統領の存在をふくめて、日本と世界の情勢にどう立ち向かっていくのか。国会議員としての責任を考えなければなりません。

 小沢一郎さんは、民主主義の原点から権力はなにかと考えた時、それは有権者の支持を得て国民のために動くためのものだ、といいます。安倍政権は長い自民党政治の中でも特異だ、とも指摘しています。首相は自分のため、自分の友達のための政治をやっています。政治を完全に私物化している。歴代の総理夫人には秘書など付かなかった。しかし安倍昭恵さんには外務省から3人、経産省から3人の秘書がつけられていました。その延長のうえに森友問題、加計問題がある。このまま安倍政権が続くと、日本の社会そのものが根底から崩されてしまうのではないか。そう思っています。

 残念ながら新年も安倍政権の下で政治をやっていかなければなりません。私はヘイトスピーチをなくしていく課題に2013年から全力で取り組んできました。ヘイトスピーチが猖獗を極めて日本全体に広まっていったのは2012年末の安倍政権復活からです。そもそも2009年に在特会ができてヘイトスピーチをまき散らすようになったのは第一次安倍政権と期を一にしています。極右的政権の下ではマスコミも知識人も影響を受けてきました。戦前もそうでした。「国賊」「非国民」などの言葉が使われるようになった日本は異常です。
 『否定と肯定』というホロコースト裁判を描いた映画のなかで「卑怯者は安全なときだけ居丈高になる」というゲーテの言葉が紹介されていました。「銃眼から敵を撃つ」卑怯者がネット上にはあふれています。一刻も早くこの安倍政権を変えなければならない理由のひとつです。私たちの日常を被う空気を変えなければなりません。

 新しい2018年を迎えようとしています。立憲民主党は総選挙で大きな成果を上げました。立憲民主党はいまがピークだからそのうち自分たちの党に頼ってくる、という民進党幹部がいます。そんな発想が古すぎるのです。まずはくっきりとした理念と政策を掲げることです。そして2019年春の地方選挙、夏の参議院選挙で与野党逆転を実現し、やがて来る総選挙で野党の力を結集して本当の政権交代を目指さなくてはなりません。

 私も民進党から立憲民主党に移って大きな政治のうねりを創る仕事に取りかかります。「大日本帝国リベラル」ではなく、「新生日本リベラル」の旗を立てます。立憲民主党が知的文化的に影響力ある政治勢力になるために努力していきます。50年も前に丸山眞男さん、梅本克己さん、佐藤昇さんをはじめとした多くの学者や政治家が発言した日本の論壇はいまより活発でした。私たちもそれに負けないような生き生きとした社会を創るために進んでいきます。皆さまのご支援を心からお願い致します。

(注)丸山眞男さんの発言は『現代日本の革新思想』(岩波現代文庫)、小沢一郎さんの発言は『小沢一郎の権力論』(朝日新書)にあります。

<プロフイール>
 有田 芳生(ありた よしふ)
  1952年京都府生まれ。 2010年参議院議員比例区当選(民主党)。 2016年参議院議員比例区当選(民進党)。
  2017年12月民進党を離党し立憲民主党入党。

※この記事は2017年12月13日参議院議員会館で録画し有田議員の校閲を得て掲載したものですが文責はオルタ編集部にあります。
 インタビューの模様: ##https://www.youtube.com/watch?v=A0XCutHdShg ##

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