≪連載≫日中間の不理解に挑む(8)

「筆順からして違う! 日中の漢字」

宮崎 いずみ


 我が娘が昨年9月、中国北京で現地の小学校に入学して、1年が過ぎました。中国では、毎日その日の宿題は何なのか、先生から保護者の携帯電話にメッセージが入って、子どもが宿題をするよう監督しなければなりません。娘の宿題をチェックしている私も自然と中国で小学校の課程を受けているかのような状態になっています。

 この状況になって初めて知ったこと、それは日本語の漢字と中国語(簡体)の漢字で、字は同じでも、書き順が違うものがけっこうあることです。例えば、「王」の字。日本語では横→縦→横→横ですが、中国語では横→横→縦→横。当然、王へんやその他王という字が入った字、すべて筆順が異なってくるわけです。

 たぶん日本で中国語を教えるときでもふつうそこまでは教えていないし、私の知るかぎり、中国の日本語教育でもその点には触れていることはありません。
 筆順がどうであっても書いた字が正しく認識されれば支障がないのは事実ですが、表面上は同じように見えて、共通だと思いこんでいたけれど、実は根底からのプロセスが違っている…私たちのコミュニケーションでも実はこんなことがあるのかもしれません。

 例えば、贈り物。中国の人からもらう贈り物は、たいてい大きなものだったり、食べきれないほど大量だったりするのですが、それは贈り物を通じて、自分の気概を伝えようとしていることが多いよう。つまり、いかに相手への好意を伝えるか。でも、日本では、何を送ったら相手が喜ぶかを考えて贈り物を選ぶことが多いのでは?
 贈り物ということでは表面上同じだけれど、それを選ぶまでの考え方、背後にある考え方は違う。筆順の違いからここまで言うのはちょっとおおげさかもしれませんが、日頃の生活ではついついものごとの表面だけ見てしまいがち。この筆順の違いを例として、自分への戒めとしたいところです。

 (筆者プロフィール;筆者は北京在住・日本語教師)

※注)この記事は日中市民社会ネットワーク(CSネット)41号から許諾を得て転載したものです。


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