【オルタの視点】

「核兵器禁止条約で変わる世界 -日本はどうする-」 (講演抄録)

2017年7月締結された核兵器禁止条約の成立の背景と「核抑止力」に依存しない平和を実現するために日本、そして私たち市民はどのようなことができるか、国際NGO「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」の川崎哲さんの講演会から考えます。

川崎哲 (あきら) :NPOピースボート共同代表。1968年東京生まれ。東京大学卒。2009~10年「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」でNGOアドバイザー。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)では、2010年~2012年副代表、2012~2014年共同代表、2014年7月以降国際運営委員。

■核兵器禁止条約と根本的な問いかけ
核兵器禁止条約は、国際法の条約で、核兵器を含む様々な兵器や軍備の管理、或いは縮小、廃絶に関しては、法的拘束力を持って縛ることができ、その実効性を担保しています。
現存する核兵器の過半数を保有するアメリカが、交渉相手に完全に非核化しろ、という世界は、ある意味であまりに前近代的な世界秩序ですが、残念なことに、これが国際社会の現実だと多くの人が受け入れて、それでいいと単純に反応してしまう。そういう意識が戦後の長い時間の中でこの日本社会でも根付いてしまっていることは、危険です。
問題の本質は、核兵器とはどんな兵器であって、なぜ核兵器を無くさなければならないのか。それはただの力を示す道具ではない。そのことをしっかりと捉えなければいけない。そもそも核兵器を保有していいという状態があること自体がおかしいのだと問題の軸足をちゃんと移さなければいけないのです。

■ノーベル平和賞の意味
昨年ICANにノーベル平和賞が贈られたのは、おそらく、核兵器そのものの恐ろしさの原点、廃絶しなければいけない理由の原点を、ICANという市民運動が改めて世界に思い出させてくれた、その事に対する表彰です。 それにより、核兵器禁止条約という一つの普遍的なルールに成り得るものが、国際法として生まれたことに対する評価として捉えていいかと思います。

■ICANという組織と活動
 ICANは、元々は、1985年にノーベル平和賞を受賞した反核運動を代表する組織「核戦争防止国際医師会議・IPPNW」のプロジェクトの一つとしてオーストリアで始まりました。長い反核運動の歴史を土台として、2007年新しくNGOの連合体としてICANを立ち上げ、現在101ヶ国、468団体が参加しています。(本部ジュネーブ)
比較的若い世代が中心で、世界ではマスコミが核兵器のことを書くことがほとんどない中、自らのソーシャルメディアで、核兵器の非人道性や核兵器禁止条約の必要性ということについて明確に訴え続けました。
さらに特徴として、今回ICANが提案し作った禁止条約は、比較的シンプルな作りだったことです。この条約では、核兵器は悪である、許されないものだという規範を作ることに重点を置いています。核兵器を無くすために実務的にどうやっていくのか、或いは核兵器を無くすプロセスの検証措置をどう詰めていくのか、詳細部分は、積み残し課題になっています。条約発効後の契約国の会議の過程で詰めていく、という形になっています。
比較的シンプルな条約を先に作り、条約を広げていく中で核保有国を包囲していく戦略を描いたわけです。それにより、比較的早期に条約を作れました。この条約が出来たことによって、すぐに核兵器がゼロになるわけではありませんが、この条約が存在することによって、これに署名、批准していくという現実のプロセスが進んでいくわけです。
 
<原爆の被爆者や核実験の被害者>
この条約の中では、原爆の被爆者や核実験の被害者を横並びにしています。日本は、唯一戦争時に使われた核の被爆国・被害国ですが、世界的には核実験は2000回以上行われていますので、世界中にそういう被爆者や被害者がいることになります。
ピースボートでは、被爆者をはじめ、タヒチや、オーストラリアのアボリジニの被爆者や福島の被災者の方々など、述べ170名余りの方に船に乗っていただき、原爆や核実験、原発事故の被害など、包括的に核のもたらす負の影響、人間や環境に対する影響ということを伝える活動をして、ICANの活動を支えてきました。

<現在の核兵器や使用の危険性>
 今日、世界に存在する核兵器は約1万5千位です。アメリカとロシアが7千発ずつ、イギリス・フランス・中国が2~300、インド・パキスタン・イスラエルが各100程度。北朝鮮が10~20位それぞれ保有することとなります。その他に、非核保有国でありながら日本が核兵器に転用できる使用済み核燃料47トンすなわち6千発相当の原発の材料を持つほか、世界には、さらに10万6千発をこれから作れるだけの核物質が存在します。それら全体をどうしていくかを考える必要があるわけです。
中東情勢の悪化、IS等テロ集団の台頭などで、核兵器が使用される危険性は高まったのではないか。さらに、核兵器の事故や誤発射、保守点検での事故やサイバー攻撃による発射など危険性は増えていると考えられます。 核兵器は使われないだろうということは全くの根拠なき楽観論といえます。

■核不拡散条約NPTから核禁止条約へのプロセス
1970年に発効された核不拡散条約NPTは、核兵器保有5ヶ国は当面核兵器を保持してよいが、他の国々の核兵器保持は禁止。と同時に、核兵器5ヶ国は、核軍縮をすると決められました。が、あまりに軍縮のスピードは遅く、2010年に新しいプロセスが始まります。
2010年、赤十字国際委員会が、核兵器が一度使われれば、あるいは原発事故でもあれば、救援にも行けないことになる、いかなる国の核兵器も非人道的であり許されないと声明をだし、核の非人道性の議論が始まりました。 ノルウェー、メキシコの会議を経て、第3回オーストリア会議で、核兵器禁止条約を作ることが明確なゴールの一つとなりました。ICANは、開催国とともに、同国際会議への参加を働きかけたり、参加者に、核の非人道性や核兵器禁止条約の必要性について意見表明をするよう要望します。
2017年3月から7月にかけて、コスタリカ大使のリーダーシップの元、禁止条約の交渉会議が開かれ、7月に国連加盟国の3分の2の賛成を得て条約の成立となりました。核保有国や、核保有国に連なる日本も含めて欠席しましたが、アメリカの全同盟国が欠席したわけではなく、例えばオランダは条約に参加して、立場表明をしたうえで、最終的には反対票を投じました。一方、日本は条約交渉にも参加しませんでした。日本の席に、「Wish your here」(あなたに居て欲しかった)と翼に書かかれた折り鶴があったことは広く知られています。
ただ、日本の人々の関心や思いは強く、メディアの取材も一番でした。この条約成立のプロセスに日本が参加していないともいわれますが、むしろ、日本の被爆者も人々も参加しているし、日本の市民の思いはそこにあるけれども、政府だけが参加していなかったという感じだったと思います。

■条約の内容
〇前文:一番重要で画期的なのは、「いかなる核の使用も国際人道法に違反する」と明言したところです。これまで様々な国際法の中で核兵器に関する規定は「一般的には国際人道法に違反する」というもので、例えば、国の自衛のための「極限的な状況」においては違反か違反でないか曖昧でした。
被爆者と核実験被害者が受けて来た苦しみを鑑みれば、いかなる条件でも国際人道法違反だといえる。そして、核兵器の使用は国際人道法違反なのだから、核兵器に依存した軍事政策を憂慮する、ということになります。ここが、日本も依存している核抑止政策の問題になります。

〇第1条(禁止)は禁止事項です。ざっくり言えば、a)、b)、c)、d)で作らない、持たない。g)で持ち込ませない。日本が非核三原則に対して本気ならば、入れるのではないか。しかし、 e),f)援助、奨励、勧誘が続き、ここが抵触するわけです。日本やNATOのような国々は、自国では核兵器を持たないが、いわば核兵器を使って守ってほしいとアメリカにお願いするわけです。お願いするということは、「核兵器の使用」、或いは「核兵器の使用の威嚇」を「奨励し勧誘する」ことになり、本質はここにあるのです。日本は、核兵器の使用や核兵器の威嚇を援助、奨励していいのか、そこが問われていることをしっかりと認識して議論しなければいけないのです。

〇第2条(申告)、第3条(保障措置)第4条(核兵器の完全廃棄)。今、核兵器保有国がこの禁止条約に参加する場合はどうなるか。
「核兵器保有国」は、「持っていることを申告」しなければならない。申告した上で廃棄する。保有していたが既に廃棄した場合も同様の申告をする。
「現在保有している場合」は、廃棄プランを国際機関が作り、それを実施して国際機関が検証する。完全廃棄した場合には、無い状態を国際機関の元で保障措置をかける。という形で、非常に重要なポイントです。 

<北朝鮮問題での活用>
この条約に反対する人達は、我が国には北朝鮮の核の脅威があるから核兵器禁止条約には入れないと言っていました。が、これは全く逆で、脅威があるからこそ、信用出来る核廃絶とは何かを考え、このような国際機関をきちっと作って、廃棄プランを検証していく必要があります。
北朝鮮が仮にこの条約に入れば、条約の締約国として、こうしたプロセスを踏んで行くことになります。北朝鮮がこの条約に入らなくても、同様な内容の法的文章を作って締結させなければいけないわけです。ということは、この内容についてどういうプロセスで進めていくか、私達は議論をし専門家達に議論をさせなければいけない。そうした道筋をすでに禁止条約は示しています。

<南アフリカの例から学ぶ>
この案を作った南アフリカは、1980年代に原爆を6個製造しましたが、その後、廃棄して国際的な検証を受け入れました。なぜか。かつて南アフリカは、アパルトヘイトの人種隔離政策をとり、国際的に大変孤立する中で原爆を製造したのですが、アパルトヘイトを止めて、より民主的な政権に移る中で、原爆保有を認めて非核化の検証を受け入れました。
孤立した国は核武装に走りやすい。それが、開かれた国になる場合は、核を止め国際的な検証を受け入れて、経済協力をしていく方向になっていくわけです。
今、北朝鮮はターニングポイントに立っていますが、その時に南アフリカの例がどう北朝鮮に使われるのかを議論する必要があると考えています。

〇第6条、被害者援助と環境の回復
この条約を作る運動の基礎に、被爆者や核実験被害者の苦しみがあり、そのため、その人達に対する援助や汚染された環境の回復義務を定めています。日本は広島と長崎の被爆者を援護し、福島で除染した実績もあるので、これらの活動がどのように行われる必要があるか、よく知っています。日本こそが、積極的に主導してこうした被害者援助の環境回復について発言しなければいけないはずです。

■今後の課題​
〇第1の課題:署名・批准の促進―>50か国で発効/被爆者の役割
なるべく早く署名、批准を進めるために、各国内で優先順位を上げてもらうよう、市民運動が果たすべき役割があると思います。
〇第2の課題、核兵器禁止条約の存在についての広報、教育。
核兵器禁止条約そのものがまだあまり知られていません。また、唯一の戦争被爆国である日本が、署名も批准もしていないというその基本問題も理解されていません。そのことを多くの人に早く知らせていく必要性があると思います。その点をはっきり打ち出せば、もっと大きな国民的な議論になっていくと思います。様々な取組みの組織をお持ちの方は、この事についての広報や議論のきっかけを作って頂きたい。
〇第3の課題 核の傘下国の核政策 核使用・威嚇の「援助、奨励」
日本は、核使用や核威嚇の援助、奨励をしているのではないか。これが日本の安全保障政策でよいのかという政策論争を国会議員の方達には展開していただきたい。
〇第4の課題:将来的加入を視野に入れた関与 検証等の精緻化
例えば仮に北朝鮮が核兵器禁止条約に参加した場合は、どのような検証措置にしていくのか。どのような国際機関にしていくのか、議論を主導していくことが必要です。
〇第5の課題:企業・金融機関への働きかけ。
地雷やクラスター爆弾の時と同様、核兵器製造企業に融資する銀行は問題なので、融資しない銀行を作っていくという市民運動がこれから始まると思います。そういう銀行を増やすことが重要で、実際ここ1年弱の間に、世界で30の銀行が核兵器関連の投資を引き上げています。その上、二、三の政府レベルでの年金基金など、例えばノルウェーなどでは、自分たちの基金の運用として核兵器の関連企業への融資は止める、と宣言しています。
詳細はこちら http://peaceboat.org/22714.html

■個人レベルでできること・SNSとヒバクシャ国際署名
個人レベルではまずは、SNSで「Yes I CAN」とハッシュタグをつけて拡散を進めています。
そのほか、日本では、核兵器廃絶運動にかかわる方々が集まって、「ヒバクシャ国際署名」という署名活動を、2020年まで全国的に進めています。日本の被爆者組織の一つ、被団協が提案をして、推進連絡会を形成、様々な団体が推進連絡会に入る形をとっています。
特に自治体の市長村長らに対する働きかけを意識的に進めています。すでに国内1700以上ある自治体の約半数がこのヒバクシャ国際署名に市長のレベルで賛同しています。又、広島市長をトップとする平和首長会議(世界7500都市の連合体)とも連携し、核兵器禁止条約への参加を全加盟都市から自国政府に働きかけるというアピールをしています。 本年1月で、日本でも113の議会が意見書の形で核兵器禁止条約への署名について、政府に要請していますが、これを増やしていくのがよい方法ではないかと思います。
 例えば、1980年代に、全国の8~9割の自治体で非核宣言を出していますが、現在、そのままになっています。自治体によっては予算をつけているので、「ヒバクシャ国際署名」の話をもっていったり、市民と自治体で共催イベントする、など活用するのも一つかと思います。
―>署名はこちらからも可能です。http://hibakusha-appeal.net/index.html

■日米安保条約があるから核兵器禁止条約に入れないのか?
核兵器禁止条約では、「核兵器」の「使用」や「威嚇」に対して「援助」、「奨励」、「勧誘」しないと決めています。核兵器禁止条約のもとでも、核兵器以外の手段であれば、例えば、日米が様々な安全保障上、軍事的な協力はいいわけで、そこに核兵器を絡めてはいけない、と言っているわけです。
同盟関係がありながら核兵器の議論を別にする、ということは、はたして出来るのか。例えば地雷禁止条約の例。地雷禁止条約に、日本は参加し、アメリカは不参加です。したがって、アメリカが地雷を使う事に日本は協力しない。同盟関係であるといっても、アメリカを100%支持する必要はないわけで、ここは支持できない、ということはある意味で普通の関係です。

■NATO諸国での議論の始まり
 実はNATO(北大西洋条約機構)の国々でも、どのようにすれば、同盟関係を維持したままで核兵器禁止条約に参加できるのか、その検討や調査を行おうという国々が出てきました。ノルウェー、イタリア、アイスランドや、NATOに近いスウェーデンです。その形態は、議会に委員会等を作るとか、或いは、報告担当者を決めるとか、いろいろですが、実際に調査は始まっています。
日本も、日米安保条約の元でどのように核兵器禁止条約に参加できるかを検討することは、議会の主導権で出来るのではないか。直接的に核兵器禁止条約に署名をすぐに要求するとなると、政府はおそらく反対し、野党の支持しか集まらず、地方議会でも通りにくい。そこを工夫して、核兵器禁止条約にどのように参加が出来るか調査を開始する、或いは核兵器禁止条約の参加に向けた努力を始めるなど、ちょっとクッションを入れたような目標にすれば、今の政治の枠組みの中でも与党の一部をまき込んで議論を作る可能性はあると思うのです。

■北朝鮮問題に対する一つの考え
結局、北朝鮮に対してどうするか。北朝鮮が、朝鮮半島の完全な非核化にコミットし、そのコミットが変わらなければという前提ですが、その方向に向かうならば何らかの法的な拘束力のある形でその合意を明確にしないといけない。
 私は、南北が朝鮮半島を完全に非核化することに合意しているのなら、南北両国が核兵器禁止条約に署名すればいいと思います。核兵器禁止条約という既存の条約を使って南北の非核状態を保障するという法的拘束を担保する。
北朝鮮のサイドであれば、申告から廃棄、そして保障措置という一連の義務を負う。
一方、同時に韓国もこの条約に入れば、自国内に配置、設置、配備してはいけないことが義務になります。北朝鮮は以前から、非核化交渉をするならば、韓国にも核兵器が無いことを保証しなければ自分達も非核化は出来ないと主張してきたわけです。ですから韓国もこの条約に入れば、韓国はアメリカの核兵器を自国内に置かないことを法的に誓約したことになり、同時に援助・奨励・勧誘もしないわけですから、例えばアメリカが北朝鮮に対して核兵器で威嚇することについて援助しないことになります。
韓国はこの第1条を守るので、北朝鮮は、北朝鮮が欲しい安心が得られる。同時に、北朝鮮がこの第2条から第4条を受け入れることによって、韓国側も欲しい安心が得られるわけで、公平な取引だと思います。朝鮮半島の非核化をどう担保するかを考えた時には、南北両国が同時にこの条約に参加するということを、ゴールにするのがいいと私は思い、それに向けたプロセスを交渉の中で進めていくことを考えています。
 そこに日本も参加するのがより望ましい。日本も、非核三原則というのが本気であり、日韓朝の三カ国でこの条約に入るとすれば、日本と朝鮮半島がある種の非核兵器地帯となり、それにこの条約を使えると思います。
思いますが、残念なことに現時点で、各国政府ともこの条約を支持しないので、必ずしもそうはならないかもしれません。しかし、いずれにしても、ここにあるような内容の法的拘束力のあるものを認めさせないことには、私達は安心してこの地域が非核化されたとは思えないわけです。そのためにも、この禁止条約の内容が重要なカギになると考えています。

■議論は始められる
ノルウェーでの受賞式典から帰る頃、クリスマス直前で、周辺にクリスマスの屋台が出ているオスロの市役所隣の平和センターでは、「BAN THE BOMB」(核兵器禁止)と垂れ幕が下っていました。核兵器禁止という垂れ幕が日本の銀座の銀座通りに並ぶことは想像ができませんが、ノルウェーではそんな感じでした。
ノルウェーのノーベル委員会はノルウェー議会がメンバーを決めたもので、その委員会がICANに賞を与えています、けれども、まだノルウェーは条約に入っていません。ベアトリス・フィン等と一緒にノルウェーの女性の総理大臣とお会いした時、総理大臣は、自分達は核兵器禁止条約に入るつもりはない、と言っていました。が、国会議長と話をすると、政府はそういう立場だけども、これは重要な問題だから皆で議論しましょう、といいます。結果、先程言ったようにノルウェーではこの核兵器禁止条約にどのようにすれば参加できるかについて調査を行う事が正式に決まり、今年いっぱい調査を行うことになりました。
日本では日本社会の閉塞性と言いますか、閉鎖性を表す言葉として、「忖度」というのがキーワードになっていますが、結局のところ日本では政府が条約に参加しませんと言うと、そこで議論が止まってしまうんです。これをどういうふうに変えて行くかということは日本社会全体が試されている部分だと思います。
今回の北朝鮮との会談においても、アメリカはそれなりにリアルにかなり幅のあるシナリオを検討しているようでした。しかし一方、幅広い検討がない日本の有り方は、国民も現状がそのまま続くのかなという感じのところもあるようで、そこは変えて行く必要があると思います。
核兵器はやはり無くしていこう、という方向に進むことは十分あり得ると想定して、その時に何が必要かを考えることを市民サイドも、政治に携わる方々にも考えてもらうよう言っていくことが必要だと思います。

■最後に
ベアトリス・フィンICAN事務局長が受賞時の挨拶の中で「核兵器の終わりなのか、それとも私達の終わりなのか」と力強く述べました。その背景には、私達がボンヤリしていたら本当にまた核兵器が使われてしまいますよと。そこの危機意識をまずは持たなければいけないとこを彼女はかなり強調しました。
サーロー節子さんはご自身の体験に基づいて、「核兵器は絶対悪だ、必要悪ではなくて絶対悪だ」とおっしゃいました。その前提として彼女が瓦礫の中から這い出てきたことを語ります。彼女は「誰か大人の声がしたわけですよ。こっちに来いと。光の見える方向に向かって進んで行けと、押し続けていけ」と。こういうことを言われて自分の手で、足でそこから脱出することが出来たと、その話をしてその言葉を皆さんにお伝えしたいというふうに彼女はスピーチを締めくくられたのですね。サーローさんは今86歳におなりになったと思いますが、そのお年でいらして自分の力でしっかりと前に踏み出さないと、本当に生存というものはありませんよと、と警告してくださっていると思っています。
その危機意識をしっかりと持って議論を進めて行くということがとても大事だと思っています。

資料:「新版 核兵器を禁止する 条約が世界を変える」 川崎哲 岩波ブックレットNO.978

講演会:「核兵器禁止条約で変わる世界―日本はどうするー」
日時: 2018年5月26日土 於・快 快いい会議室
主催: 一般社団法人 市民セクター政策機構 共催:生活クラブ親生会
講演録より 構成・文責:オルタ広場編集事務局

その他資料(オルタ広場編集事務局)
■参考:「データ日本:核兵器廃絶」
http://alter-magazine.jp/index.php?%E3%80%90%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%81%AB%E3%81%A3%E3%81%BD%E3%82%93%E3%80%91%EF%BC%885%EF%BC%89%E6%A0%B8%E5%85%B5%E5%99%A8%E5%BB%83%E7%B5%B6

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧